4月10日(日)エルおおさかにおいて京大人文科学研究所准教授の藤原辰史さんを迎えて「食と農業の今」と題した講演会が開催されました。
三里塚関西実行委主催の集会はコロナ禍の影響もあり2020年3月、反対同盟の市東孝雄さんと大口弁護士を招いて開催された時以来久しぶりのことでした。
[コロナ対策怠るな]
約60名の参加で司会は全国金属機械労組・港合同南労会支部の樋口曜さんにお願いしました。
集会が始まるとすぐ参加者の一人から部屋の換気に注意するよう指摘があり、慌てて閉めていたドアを開けたり空調機を調節したりしました。コロナ感染はいまだに収まる気配はありませんが、2年を超え私たちの気持ちの中に「慣れ」という油断が入り込んでいるのかも知れません。改めて三密回避や手洗い、マスクそして換気の徹底に努めましょうと思いました。
[四つの連帯あいさつ]
さて主催者あいさつの安藤眞一さんは牧師の立場からウクライナの現状を憂い、平和と命の大切さを訴えました。
続いて四つの連帯のあいさつ(ひとつはメッセージ)をいただきました。初めに三里塚反対同盟の萩原富夫さんから空港機能強化反対の3・27芝山現地闘争の報告と、2050年CO2半減方針とは裏腹の発着回数2倍化を目論むNNAを弾劾し、市東さんの農地を守る闘いとともに気候変動阻止を反対同盟の闘いの基軸にしたいという表明がありました。
続いて部落解放同盟全国連の滝岡広治さんはウクライナのの状況を「国というくくりで考えると間違いでは?」すなわち単にロシアという国とウクライナという国の戦争という構図でとらえれば判断を誤ると指摘しました。
そして狭山裁判が「第三次再審の結果がすべてで後はない」といよいよ最終局面を迎えつつあることを明らかにし、裁判所前行動と署名そして新聞への意見広告と5・22日比谷での闘いを提起しました。
次に当日滋賀県での独自集会と重なり不参加となった全国連帯労組関西生コン支部の西山直洋執行委員からのメッセージが代読され(別紙)最後は「若狭の原発を考える会」の木原壯林さんでした。
木原さんはウクライナの原発がロシア軍に占拠され核戦争の危険性が高まっていることに便乗し、維新の松井が非核三原則を否定したり、安倍元首相や高市早苗が「核共有論」に走っていることを「まさに火事場ドロボー」と批判しました。安倍はかつて27回もプーチンと会談を重ね「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。・・・ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で、駆けて、駆け抜けようではありませんか。」と宣っていました。いったいどんな未来なのか、ゴールなのか、説明できるのならやってみろと言いたくなります。
また、木原さんは「原発推進=CO2減はまやかし、老朽原発再稼働は戦争のためのもの、新しい社会、農地を守ることは人が人間らしく生きるため、資本主義からの人間性の回復です」と語り最後に「原発のない明日を 5・29集会」への結集を訴えました。私たちも氏の提起に応え是非うつぼ公園に駆けつけましょう。
[食と農を考える]
これらのあいさつの後、藤原辰史さんの講演が始まりました。氏はまず自書「ナチスのキッチン」などを引用し、ナチスが台頭できたのはヒトラーが都市労働者より農村に残っていた保守的な体質を基盤にして「農民が国の主人公でなければならない」(農本主義)と訴えて支持を伸ばしたからと説明しました。しかしナチスの「生きるに値しない性(障がい者)を作りだし、死んでも構わないという思想を流布し実行した」ことは絶対許されない憎むべきことだと弾劾しました。現代でも自民党の杉田水流などに繋がる差別思想です。
そして今日CO2により気候危機が問題になっているが、それだけではなく「人が食することは循環の生態系の一過程を人が担っている」という自然の摂理をモンサント社(2018年にバイエル社に合併吸収された)などの毒性の強い農薬により破壊されている問題にも触れました。(ラウンドアップという商品名で一般家庭にも入り込んでいます)
そして砂時計の形状にたとえ、一般農家が生産した農作物を巨大企業に一極集中させ、独占的に先進国市民に販売するという今日の資本主義経済を批判しました。
またコロナ禍で移民労働者が来日できず、日本の農業がピンチになっていることに加え、食料自給率が37%にまで落ち込んでいるという致命的な現実はまさに政治の失政の証だと断じました。
その他にも子供食堂、原発、満州移民そしてウクライナ情勢など多岐にわたるお話が続きました。レーニン、スターリン、毛沢東も大規模農業を実行しましたが、結果農村自治の喪失を生じさせることなりました。
日本政府も今日、農業従事者の高齢化や跡継ぎ問題を捉え、大規模農業(会社化)を推進するとしていますが本当に今の社会体制のままでいいのでしょうか。藤原さんの言われる「食と農を通じた世界システムの問い直し」が必要ではないでしょうか。
個人的にいつも思っているのは、豊作や豊漁であれば人類にとって喜ぶべきことのはずが、現実は値崩れを恐れて何割かを廃棄するということがありますが、これこそ環境破壊であり、世界システムの矛盾を象徴しているように思うのですが・・
[これからも三里塚と共に]
藤原さんは「有機農業はすぐには採算が採れない、(周囲の)協力が必要」と言われましたが、まさに今三里塚は市東さん、萩原さんの有機農業を三里塚に思いをはせる全国の人々の協力で「共有」していると思います。藤原さんの結びの言葉も「食と農を通じて共有することが大切」でした。
その後数人の参加者から質問や意見表明があり、成功裡に集会を終えました。
コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻という深刻な状況の中の集会でしたが、「食と農」という人間が生きていく根幹に関わるお話を聞いて大変勉強になりました。
(弥永 修)
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