羽田空港の新しい飛行コース
今朝の朝日新聞に『羽田新ルート 住民に不安』の記事を見ながら、朝っぱらから気分が悪い。
オリンピックによる海外からの「旅行客」の増加に見合う羽田・成田の便数を一気に増やすために、成田では昨年10月27日から、空港の運行供用時間が午後11時までだったものが翌午前0時半まで延長された一方で、羽田で記事の写真にあるように人口密集地帯である品川などの上空から低高度で着陸してくるコースと川崎市上空を離陸するコースが、この3月29日から運用開始されるにあたっての試験飛行が終わったことを伝える記事だ。
当然のことながら成田では、夜間の睡眠が妨げられ住民の苦情が出ている。そして品川区を中心にその凄まじい騒音に驚いた住民の声が、この記事では紹介されている。以前、沖縄の普天間基地の騒音訴訟に携わっている人と話し合った時に、彼が「航空機の騒音は、なってみないとわからないというのが難しいところだ。なる前にやめさせるのがいいのだが」と語ってくれた。
しかし、国、安倍政権は、委細お構いなくこの成田、羽田の事態をオリンピックを口実に住民に一方的に強制している。2030年代に、羽田、成田の首都圏空港でアジアのハブ空港化を目指している安倍政権は、この事態をオリンピック後にも引き続き住民に強制しようとしているのだ。
そもそも羽田の場合のこの窮屈な飛行コースが突然出てきたのは、首都圏の西側に米軍横田基地の存在による巨大な米軍横田空域が存在し、それが壁となって羽田の西側からの着陸コースや西側への離陸コースがほとんど確保できないということが最大の原因である。安倍政権と歴代の自民党政権は日米安保条約を前提化するために、日米地位協定による米軍の自由気ままな運用、運航を認めてきた。厚木基地や沖縄の嘉手納、普天間基地の深刻な騒音被害もこのために放置されたままになって、住民の深刻な生命、健康の被害が放置されてきているのだ。裁判所は、いずれも日米安保条約を理由に、今に至るも住民の訴えを門前払いにしているのだ。
私たちは1970年代、関西空港の建設に反対する(私の場合は、1970年ころ最有力と言われた神戸沖建設に反対して立ち上がった)行動の中で、当時、関西での最大の関心事になっていた大阪空港周辺の住民の騒音被害の深刻さに注目し、それを支援する行動の中で多くのことを学んで、自らの空港反対の根拠の一つとしてきた。大阪空港周辺ではいったんは地裁、高裁段階で住民が勝利しながら、空港の公共性を盾に最高裁で敗訴した。しかし、その過程を通し、内陸空港の限界が社会的に認知され、大阪空港の供用時間が午前7時から午後9時までと大幅に縮小された(現在も)。また川西市の久代地区や豊中市の服部地区など(森友事件の原因となった)は、多額の補償金のもとに移転が行われ、人が住めない地域となった。そして、このことがそれ以降の空港周辺での一つの基準とされていった。成田空港の開港が強行された1978年もその直後であり、この規制が不十分とはいえ適用されていたのだ。
それが、安倍政権の下で人がどうなろうが「自己責任」だと言われ、様々な犠牲が住民に強制される時代となってしまった。今回の羽田をめぐる事態、オリンピックを口実とした住民の犠牲、生活と健康被害を前提とした羽田空港の運用とはそういう事態なのだ。50年前の大阪空港周辺の住民の怒りの声を反映した新聞やテレビ、マスコミの姿勢は、今ではかけらも見られない。以前からの大田区の住民の声も無視し続けられてきたが、今回の品川や川崎の住民の声もそうなるのだろうか。
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