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2018年9月28日 (金)

請求異議審・最終弁論が行われた

18927 昨日、千葉地裁で、市東さんの農地をめぐる請求異議裁判の最終弁論が行われた。事実をねじ曲げ、嘘で固めた多見谷判決を踏襲しただけの東京高裁決定、そして最高裁決定が許せるわけがない。

 その最高裁決定に「異議あり」と、請求異議裁判が2年あまりにわたって闘いぬかれてきた。原告・市東さん側の弁護団による弁論、そして証人4人による証言、そして石原健二、内藤光博両補佐人による農業、憲法それぞれの専門家として意見など、すごいとしか言いようのない毎回の法廷だった。被告・空港会社は、何一つ反論らしいものもすることができず、ただただ裁判所にすがるという姿勢を取り続けた。

 18927_2この日の法廷は、市東孝雄さんの最終意見陳述(後掲)にはじまり、石原、内藤両補佐人の意見、そして12ポイント程度の通常の裁判所への書類には見られない小さな字がびっしりの230頁に及ぶ最終弁論の要約が弁護団から3時間近く述べられた。それは50年に及ぶ三里塚の闘いを語り、現在の国による拡張・第3滑走路計画をも批判するすごい内容だった。

 亡くなられた北原鉱治事務局長が、「三里塚はいつも、裁判には勝つが、判決で撒ける」とよく言われていたのを思い出す。さて、今度は?

 18927_3しかし、報告会で最初に挨拶に立った市東さんが、「どんな結果になろうが、私は闘う、頑張りましょう」と檄をとばされた。頑張ろう!

 判決の法廷は、12月20日(木)午後2時、千葉地裁601号法廷です。この日も正午に近くの公園に集まって集会とデモ、そして傍聴券の確保のために並ぶことになると思います。お集まりください!

 

請求異議審 最終弁論 市東孝雄さんの最終意見陳述 

 この裁判の最後に、私の今の気持ちと、天神峰であくまでも農業を続ける決意を述べたいと思います。

1)農地は私の命です

  18927_4私はこれまで自分の仕事に誇りを持って生きてきました。今も、試行錯誤しながら有機野菜のための土壌を作っています。私の農業は農薬や化学肥料を一切使わず、露地栽培ですから、気象の変動と毎日の天気を見ながら、雑草と格闘して野菜を作っています。野菜づくりの方法に完成はなく、日々の工夫と努力の積み重ねによるしかありません。
 
天神峰と南台の農地は、そうしてできた私にとって命です。
 そこで育つ野菜を、本物だと認めてやってくる消費者家族がいます。私たちと消費者が、生産と食を相互に保障し合う、提携関係が結ばれています。これは信頼できる有機の土壌があってこそ、できる関係です。この消費者との〝顔の見える〟関係も、かんたんにできることではありません。

  空港会社は、私の農地を只の土地だと思っています。農業なんてどこでもやれると見下しています。農業よりも空港の方が社会に役立つと決め込んで、空港のために農地を差し出せ、カネを積むから出て行けという態度です。
 
だが、それは全くの間違いです。
 
農地は只の土地ではありません。農地は生きています。人が試行錯誤を重ねて、その人の農業のための土壌として、作り上げるものなのです。私の畑は、私の有機農業を実現するために、長い年月をかけて作った農地です。他にはない、かけがえのない農地なのです。
 
また、言うまでもなく、安全な食料を十分に満たすための農業は、社会にとって絶対に欠くことができません。農業はまさに、命をつなぐ〝生命産業〟です。これ以上の公共性があるでしょうか。しかも誘導路は国が安全性を認めて認可し、なんの支障もなく使われており、空港会社が畑をつぶす理由はないのです。
 私の野菜作りは、大正時代から百年間耕し、有機の土壌として作り上げた、天神峰と南台の、あの畑でしかできません。それが人々の健康と命をつないでいます。あの畑は私の人生であり、私の生き甲斐です。

  空港会社は、私が農業をやめると決め込んで、離作補償を示し、同じような農家収入の百五十年分の補償だから、百姓をやめて出て行けという態度です。そして裁判では、まともに反論せず、「強制手段の放棄」の事実をねじ曲げて空港会社を勝たせた多見谷判決と同様に、裁判所に任せておけば大丈夫だという態度を続けてきました。
 これは私の精一杯の訴えと法廷そのものを侮辱するものです。私は憤りを抑えることができません。

2)よねさんへの代執行とどこが違うのか!

  空港会社が取り上げようとしているのは、不利益を受けて解放されなかった小作地です。しかし、この畑もまた農地法で守られていました。うちは地代を欠かさず支払ってきたし、地主も信義を守ってきたと思います。
 
これを変えたのは空港公団です。父東市に秘密で売買し、地代を騙し取ってきました。あげくに空港会社が地主だと名乗り出て、私を「不法耕作」呼ばわりして、出て行けという。出て行かないなら機動隊の暴力で、取り上げるというのです。
 
私の農地の七割以上が、畑で育つ野菜と一緒につぶされます。祖父の代からの汗と涙、これまでの私の努力が重機の下に押しつぶされ、二度と野菜はできません。思っただけで、悔しくて涙がでます。
 
私に対するこの強制執行と、よねさんに対する代執行との、どこが違うというのでしょうか。
 
私は今、高瀬裁判長が下す判決いかんで、四十七年前の小泉よねさんと同じ地点に立たされようとしています。
 「もう二度と繰り返さない」「用地問題は話し合いで解決する」「強制手段は放棄する」と言って謝罪し、世間に公約した以上、私に対する強制執行は絶対に許されません。

3)〝権利濫用〟を訴えた証言と補佐人陳述

  小泉英政。加瀬勉、萩原富夫さんの証言は、大きな力になりました。
 
農地法を無視して秘密裏に買収して明け渡せというのは、まさに証言のとおり、「よねさんから強奪した手法を踏襲」するものです。
 
反対同盟が東峰に作ったよねさんの家は「借り物だった」という証言がありました。「苦労して、汗を流して頑張って、蓄積してこそ誇りと自信が生まれるし、人間は絶望しないで生きられる」という証言は、私の今の気持ちそのものです。
 私に対する強制執行は、「産直の会」を存続できなくさせ、共同生産者と約四百軒の消費者家族の暮らしを台無しにします。

  食糧自給の考えを失った農政によって、全国の農家が廃業に追い込まれています。石原健二補佐人は、「小規模農家の複合経営こそ日本の農業の基本」だと話し、私たちの農業を「いま時代が求める最先端の営農形態であって、つぶしてはならない」と訴えました。
 
そして内藤光博補佐人は、「人間の生活基盤と生きる意欲を奪い取る強制執行は、その人の人生の否定であり、尊厳を侵すから認められない」と話しました。そして、私に対する強制執行が権利濫用の特徴にすべて当てはまることを、一つひとつ確認しました。空港会社は何も答えられずにいます。
 私は自分の農業は間違ていなかったし、私がこの裁判で闘ってきたことは、私だけでなく、東峰地区や近隣住民、そして農業つぶしの農政の中で頑張る農家のためにもなることだと強く感じています。

4)「強制執行は認めない」との判決を求めます

 「私に対する強制執行は、営農の基盤を取り上げ、生きる希望をつぶしてしまう過酷執行である」
「強制執行放棄の公約を破るものであり、空港会社による権利濫用である」
「社会の正義に反するから、強制執行は許されない」
――二年間に及ぶ弁論と法廷証言、補佐人陳述は、これらのことを明らかにしたと、私は信じています。

 私はあくまで天神峰と南台で私の畑を耕し、絶対に動かない。

 農地を取り上げる強制執行は、私にとって死刑と同じです。この裁判は、私にとって命がけの闘いです。高瀬裁判長が、会社を勝たせるために事実をねじまげた多見谷判決と同様の、不正義に走ることは絶対に許されません。

 「農地取り上げの強制執行は認めない」との判決を強く求めます。

 

  

 

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