請求異議裁判(11月6日)傍聴報告
昨日、11月6日、千葉地裁で、昨年10月に最高裁が棄却決定し、東京高裁の小林裁判長による市東さんの農地や作業場の強奪が「確定」したことにたいして開始された「強制収用をするな」という請求異議裁判の3回目の弁論が開かれました。
裁判所は、次回に市東孝雄さん、萩原富夫さんの証人尋問を(それも30分)やって、一気に最終弁論、年度内の判決に持っていこうとしていました。この危機的状況を目の当たりにして、弁護団の気迫にみちた踏ん張り、傍聴席からの凄まじいまでのヤジと怒号が、とにもかくにも裁判所を、裁判長を思いとどまらせ、次回、3月8日の弁論が開かれることになりました。
報告会での市東孝雄さんからの挨拶も、短いながら、この日の緊迫した状況を反映したものとなっています。
市東孝雄さん やはり今日の訴訟の中における三里塚裁判ですね、今日だけでなく、いくつかの裁判を観ていると、相当、最高裁からの圧力がかかっていると思うのです。今日は、弁護士さんの力で押し返して、審理を続けさせたことはよかったと思います。ちょっと油断すると裁判長の訴訟指揮が早まるんで、そういうことを注意しながら、これからも闘っていきたい。(左写真は、報告会で挨拶する市東孝雄さん)
事態の切迫、緊迫は説明するよりも、葉山、大口両弁護士の報告会での報告を読んでいただければと思います。もちろん他の弁護団からも危機感あふれた報告がありましたが、膨大になりますので、お二人で代表させていただきます。
葉山弁護士 今日、最後に裁判長の心性がはしなくもあらわれたと思います。この請求異議の訴訟そのものについては、証拠調べの中で言っているように、本件の最初の裁判、多見谷裁判長の裁判そのものがろくな証人調べもしないで、しかもありもしないことについて勝手に裁判長が付け加えて強引に判決を行った。それが本件の訴訟の中で根本になっている。あらゆる意味で「強制的手段はとらない」ということに関わっている問題です。(右写真は葉山弁護士)
証人調べというのは極めて重要なわけですね。
そういった中で、今日は一瀬さん、大口さん、その他が精魂込めてこの準備書面五について徹底的に論じたということなんです。このことについては特に小泉よねさんへの強制執行の凄まじい非人間的なやり口、そういったことについて、これが延々と今に至っている。市東さんの農地を収奪しようとするそのことに明確に現れている。そのことへの反省の上に立って「あらゆる意味で強制的手段をとらない」ということが、これが空港会社、そして国、亀井静香、それから松尾という運輸次官も列席した中で公約した。もちろん千葉県も公約した。その根幹をなすものが小泉よねさんの事件ですが、そのことについて力説した。
そして離作補償料については、「明け渡しをした後で払えばいいんだ」「明け渡す前に払わなくていいんだ」というとんでもないことについて論破した。(左写真は、裁判所に向けたデモ)
そして認証計画の中においても、萩原富夫さんや市東孝雄さんについてはもとよりですが、農学者、あるいは実際上の小泉英政さん、その場に居合わせた加瀬勉さん、それから空港会社側の工事の関係者、そういうことを合わせて出したわけです。
その出した矢先に、裁判長の方から、「原告の市東さん、それから萩原富夫さんについては証人の重要性がわかっていますから次回に調べます」というとんでもない発言が出てきたわけです。
状況から見ますと、これは極めて緊迫している。今日の警備態勢そのほかを見ましてもですね、通常よりかなり異なっている。(右写真は裁判所への署名提出)トランプ情勢かなというふうに思ったんですが、そうではなく、この裁判そのものについて警備態勢をひいていたということで、警備員の数も相当な、数十人ですか、余計に警備員が来ていた。別の控室に控えていたわけですね。そういう状況の中で本日を迎えた。そういう意味で、安倍政権そのものの中で、この裁判について強引に押し切ろうという態勢が見え見えだということでした。
それを弁護団のみなさん、傍聴席のみなさんがこれを押し返した。
次回は、証人調べでなくて、3月8日、午前10時半、弁論ということになったわけです(裁判長は、1月を主張していた)。
ともかく重大な正念場を迎えた裁判だということです。そのことへの一層のみなさんの協力をお願いしたい。
大口弁護士 全員の力で裁判所の早期結審というものをいったん跳ね返すことができた。よかったというふうに思います。
この間、最高裁の人事局の締め付けというのは非常に強くなっていて、いろんな裁判官がいますけれども、どんどん裁判を進行させて決着させていく、こればっかりを考えている裁判官が多いのです。そうすると、本件については年度内に判決を出したいと考えると、逆算していけば、次回ぐらいに証人尋問、それで後は最終弁論。それで3月に判決。そういう路線を裁判長は考えていたんではないかと想像されます。
しかし、この問題の重要性、深刻性から言って、そのような裁判官の期日計算によって本件が処理されるということは絶対に認められない。そういう点で、次回は弁論ということになったわけですけれども、裁判所がどういうことを考えているかは露わになったわけでして、次回はほんとに激突だと、我々は一団となってぶつかって行かなければならない。
我々はこの裁判でいろいろなことを主張しているわけですけれども、大きな柱としては二つあると思います。一つは本件によって市東さんが致命的なダメージを受ける、それはまた日本の農業にとっても非常に重大な損失なんだ。そういう当方の法域の大きさ。それに対し、空港会社の法域というのはほとんど何もない。要するに「空港を完成させたい」ということだけしか言えない。秤にかければ針が飛んでしまうくらいの差がある。これは権利乱用の問題です。
もう一つは、先ほど来言われている、空港公団が行った社会的約束、「あらゆる意味で強制的手段はとらない」ということに反しているではないかという、この二点が大きな主張の柱なわけです。
前者については時間的な制限はないのですけれども、後の方は法律の規定によって最終の口頭弁論終結時までに生じた事項はだめだと、それ以降に新たに生じたものでなければだめだという規定があるわけです。これは我々は無視はできない。なんとか手当をしなければならないということで、この間いろいろ努力をしてきたわけです。
その一つが、小泉英政さんと空港公団の和解である。これは前の裁判、高裁の弁論が終結した後にギリギリですけれどもなされている。その点で完全にクリアされている。ここで重要なことは、「それは何十年前のことだ」とされがちだが、われわれはそうじゃなくてこの時点で、「強制的手段はとりません」「大木(小泉)よねさんの事件は申し訳なかった」と空港公団(会社)が謝罪したことによって、90年代にやった彼らの約束というものが、彼ら自身によって再度確認されたんだということを出しているわけなんですね。
そういう意味ではどの証人も大切なんですけれども、私としては小泉英政証人を実現したい。それによって、それと加瀬さんともあわせて、三里塚を象徴する大木よねさんの問題を真正面から出して、成田空港問題の本質を提起するとともに、彼ら空港会社(公団)の行った社会的約束が今でも生きているのであり、かつこれが高裁判決、小林判決の後なんだということで、今の裁判所も執行法の枠組みでも突破できないんだという状況を作り出していきたい。
今日は結果的には良かったわけですけれども、いずれにしろ裁判所の考え方というものが煮詰まってきているということは否定できません。次回の弁論にむけ、我々も所期の目的を実現するために全力を尽くしていきたいと思います。
裁判に先立ち、千葉市中央公園で集会が開かれ、萩原富夫さんが反対同盟を代表して挨拶されました。動労千葉、市東さんの農地取り上げに反対する会などが決意を述べ、関西実行委員会を代表して私が決意を述べました。
集会の後、裁判所までデモが行われ、裁判に向かいました。
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