「国策」をふりかざした 住民犠牲の強制を許すな!
関実ニュース154号より転載
50年目を迎えた三里塚
三里塚農民による「成田空港反対闘争」が、1966年以来50年目に入っています。北総台地に住み農業を営む農民が50年もたたかいつづけ、空港(国策)の完成を阻み続けていることそれ自体が驚異的であるとともに、素晴らしいことです。
11月22日、大阪であった集会で、沖縄の彫刻家の金城実さんが、「人間の誇りを奪われることへの怒りが沖縄のたたかいにあることが、大きな広がり、『オール沖縄』と言われるものを生んだ」と語っておられた。
「空港を理由に農地を奪う」ことが、「農地はいのち」と、土を耕してきた農民の人間としての誇りを奪うものでしかなかったがゆえに、市東さんは2代目に、萩原さんは3代目にたたかいが引き継がれ、50年にわたってたたかい継がれてきたのではないか。三里塚闘争は「反戦の砦」として全国の市民、労働者、学生の主体的な取り組みによって、全国闘争としてのたたかいの歴史を作り上げてきたことはたしかですが、この農民の想いとあり方の大切さを今こそ、私たちは見据えなければならないのではないだろうか。そのことが沖縄の人々の想いに、そして福島の原発事故被害者、避難者をはじめとした人々の想いに通じていくのではないだろうか。
ところが国、安倍政権は、「担い手農業」「集約化」の掛け声のもとに農地法の改悪、農地の流動化=小農・家族農業の解体へと大きく舵を切り、その流れの中で、空港敷地内に住む市東孝雄さんの農地を国策(成田空港の完成、拡張)の名によって奪おうとしています。土地収用法では強奪できないところに追い込まれた国は、司法の力を使って農地法を無視し、違法・不当な千葉地裁の多見谷裁判長による反動判決を東京高裁も引き継ぎ、当然の審理をもすることなく判決を強行しました(6月12日)。
5万人署名の実現で市東さんの農地を守ろう
この流れの中で最高裁の判断を待つ限りは結論はあまりにも見え見えでしょう。いま必要なのは、こうした国の流れに対する私たちの側のたたかいの高揚の力しかありません。反対同盟が訴えている最高裁への5万人署名が決定的に重要となっています。
さらに農地法裁判と一体になっている同じ農地をめぐる耕作権裁判が現在千葉地裁で争われています。裁判提訴自体は「市東さんの耕作が不法だ」とする許せないものですが、農地法裁判で争点としきれなかった空港会社・国側の偽証をはじめとした違法・不法が明らかにされつつあります。これもまた、裁判所である以上、最高裁と同様、たたかいの高揚なくして期待することはできません。耕作権裁判の傍聴闘争をはじめとした「市東さんの農地を守ろう」という大きな声が裁判所を包囲することが必要であることはいうまでもありません。
空港の拡張・増便による騒音被害の拡大を許すな
さらに国、安倍政権は東京オリンピックや「観光立国」を口実として、首都圏空港(羽田と成田)容量の拡大を叫んでいます。具体的には、成田空港に関して離発着する航空機の間隔の縮小と、午後11時以降の飛行禁止規制の緩和・撤廃を行うことで、離発着する航空機の便数の大幅な増加をたくらんでいます。今年7月東京高裁の判決で受忍限度を超えるとして住民の訴えを認めた厚木基地の騒音被害の10倍近い騒音被害が現状の成田空港周辺で起こっていることが、航空機騒音被害問題の専門家から指摘されています。この現状からさらに4割も5割も増便すれば、しかもそれが夜間に拡大されれば、その被害がさらに深刻なことになることは確実です。 しかも国、安倍政権は、こうした増便にとどまらず、さらに増便を可能にするために、東京オリンピック以降2030年をめどに3本目の滑走路の新設を目論んでいます。これは騒音問題の更なる深刻化、住民切り捨てを招くことは火を見るよりも明らかです。その上、この計画は、さらなる周辺住民、農民からの土地、農地の強奪を前提としています。それは、現在、空港敷地内に住み、農業を続ける市東さんをはじめとした農民をたたきだし、50年続いてきたたたかいを根絶やしにすることなしには不可能です。
「農地はいのち」この声を 沖縄・福島とともに守ろう
市東さんをはじめ三里塚反対同盟のみなさんは、「農地はいのち」だとして周辺住民に農地裁判を訴え、5万人署名への協力を求めて語りかけています。そして、こうした理不尽きわまる「国策」「成田空港の拡張」を口実とした地域住民の切り捨てに強く反対し、騒音問題に悩む住民の人々とのあらたな共同のたたかいを作って行こうと取り組みをはじめています。
私たちは、沖縄の辺野古新基地建設反対のオール沖縄の取り組みへの共感と共闘を持たねばなりません。そして収束することのない福島原発事故に怒り、苦しむ福島のみなさんのたたかいを「福島を忘れてはならない」としてともにたたかい、原発再稼働反対のたたかいの中に活かしていかなければなりません。そして、私たちは、50年かけて闘いぬかれているこの市東さんをはじめとした三里塚のたたかいを、この沖縄・福島と連帯・共闘するたたかいの中から大きく支え抜かねばなりません。
来春3月、成田市で取り組まれる予定の全国集会、そして50周年を期して首都圏に打って出ようとする反対同盟農民のたたかいに、ともに立ちあがろうではありませんか。
(関実事務局 松原康彦)
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