成田空港における「第3滑走路」問題について
2014年年6月6日、政府は、羽田・成田の首都圏空港容量、現在の75万回/年を、東京オリンピック(2020年)までに83万回、両空港での新滑走路建設によって2030年には現状の1.5倍である112万回に拡大する計画を発表しました。
成田空港では、このために2020年までに、暫定滑走路を2500メートルから3500メートルに拡張(北側へと言われています)するのと同時に、着陸機が滑走路からすぐに離脱できるように「高速離脱誘導路」を新設し、2030年までに、新たに第3滑走路を暫定滑走路に並行に作るというものです。
成田空港の年間離発着は、空港乗り入れの自由化の推進、LCC(格安航空会社)の導入以降、急激に増加し、昨年度で22万回に達しています。現状でも、暫定滑走路の北側の成田市南部と南側の芝山町では、航空機騒音が激しくなり、住民から苦情と抗議の声がくり返しでています。それを2020年には34万回にするというのですから、事態はより深刻になるでしょう。この増便自体が、住民のいのちと暮らしを無視した理不尽なものであることは言うまでもありません。
さらに、図にあるように、当初の成田空港の敷地を大きくはみ出して、第3滑走路を作るということは、その予定地に現在いくつもの部落があり、そこに住む住民、農民の宅地、農地の収用、強奪という新たな問題が起こります。そして、当然にも航空機による騒音激甚地域が拡大されて発生することになります。
国の航空政策が破綻し、世界、アジアのなかで取り残され始めたことを理由に、空港の拡張、滑走路の新設、1.5倍もの増便を「国策」として、成田空港周辺の地域の住民に一方的に突きつけ、土地・農地の強奪と騒音被害などを押し付けてくるというこんな勝手なことが許されるでしょうか。そもそも、内陸空港として建設を強行したことによって多くの住民、農民の土地、農地、そしてくらしと生命までをも奪い、今もなお48年も続く三里塚闘争を反対同盟農民に強制してきたことを、1990年、「反省」し、「二度とこのようなことはしません」と謝罪したのはいったい何だったのか。
第一に、安倍政権が、国の表玄関である成田空港で、48年も反対闘争として三里塚闘争が続いていることに消耗し、東京オリンピックまでには決着をつけたいと願望しているゆえの攻撃であるとするならば、浅はかというほうかありません。少数になったとはいえ、市東さん、萩原さんを中心とした三里塚農民の「話し合い拒否」「実力闘争」「不屈不撓」の三里塚闘争は、むしろ新たな火柱となって、沖縄、福島とともに燃え広がることは確実です。私たちも、それをとことん支持し、ともに闘います。
第二に、新たに新滑走路の予定地とされた人々、住民のいのちと暮らしを踏みにじる、このような理不尽な攻撃が、48年三里塚闘争における国家権力の不法・不当を目の当たりにしてきた住民のみなさんをねじ伏せられると願望しているとすれば、これもまた見当違いも甚だしいと言わざるを得ないでしょう。住民の想いを軽視するにもほどがあります。
安倍政権による人民への理不尽極まる攻撃に対して、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の容認、消費税増税、法人税減税などを頂点に、人々の間に広範な、烈しい怒りが渦巻いています。それは沖縄の辺野古における連日の激闘、沖縄県知事選挙への熱い想いに象徴され、同時にそのことに励まされて地下のマグマのようにすでに沸き立ち始めています。
暫定滑走路の拡張、そして第3滑走路の建設計画は、具体化すればするほど、地域の住民の怒りを引き起こし、新たな闘いの火柱となって必ず爆発するでしょう。そのことを三里塚闘争の48年は指し示しています。また、安倍政権自身が、そのことを恐れるがゆえに、暫定滑走路をどちらに延長するつもりなのか、また第3滑走路をどこに作るというのか、その具体的な位置を明らかにできないまま、6月6日に発表せざるをえなかったのです。土地強奪による住民、農民の怒りがいかに燃え上がるか、そのことへの恐怖を、三里塚闘争の48年が、安倍政権に強制しているのです。
内陸空港であるがゆえに成田空港がもつ欠陥、住民犠牲を、承知の上で押し渡ろうとする、このような安倍政権を私たちは断じて許してはなりません。沖縄の辺野古新基地建設反対の島ぐるみのたたかいに呼応し、安倍政権による市東さんの農地強奪、そして新たな新(第3)滑走路建設を断じて許さない、新たな住民の決起とともに、そして市東さん、萩原さんをはじめとする三里塚反対同盟とともに闘おうではありませんか。(10・8市東さんの農地裁判控訴審闘争、10・12三里塚現地全国集会を目前にひかえて。2014年10月6日記)
「靖国・天皇制問題 情報センター通信」第146号掲載文より転載
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