全国連第23回大会での山本善偉世話人の挨拶
一番の挨拶、まあ、歳がいっているから一番と。私は、93です。
三里塚と闘っている間に、解放同盟の方々と常に一緒でした。そんな中で、荒本の方々が解放同盟本部から排除される、そういう闘いの中から荒本と一緒になり、そして全国連の大会、23回、おめでとうございますが、第1回からずっと寄せてもらっています。
話したいことは一杯あるんですけれども、要点を言えば、袴田さんが50年近く死刑の刑を受けながら、釈放された。その一方、それよりも前から石川一雄さんは、今は無期懲役で、一応社会に出ていますけれども、彼は無期懲役というそういう冤罪を絶対我慢できず、今も闘っておられる。
私は、石川さんと知り合ったのは彼が釈放されてからなんですけれども、事件のあった時(1963年・注)から、こんな妙な話はない、これはほんとに冤罪だと思い続けておりました。
本日も未だに再審が開始されない。非常に私も、みなさんも一生懸命でしょうけれども、一日も早く、彼を完全無罪になって放たれるように願ってやみません。
映画「SAYAMA」も2回観ましたが、あの人が犯人であろうはずがない。検察の方が早く証拠を出せばいけるはずですけれども、なかなか出さないところに今の社会の問題があると思うんです。
今、本当に権力と真っ向に闘わなければ、生きていけない。黙っていたら石川さんが放たれるとは思えません。やっぱり、石川さんの無罪を、再審を勝ち取るには、闘う人数がどれだけあるか、それが問題だと思います。
三里塚を(私は)40年近く闘ってきましたが、中心になって若くて頑張ってくれた萩原進事務局次長が、昨年末、若いのにひょっこり亡くなってしまいました。ほんとに惜しい人を失いましたが、彼の遺志を継いで、今、亡くなった市東東市さんの息子、市東孝雄さんが、頑張って農作業をやっております。
先日、3月26日、千葉地裁の判決が余りにもデタラメで、東京高裁で市東孝雄さんが、ずいぶん長い、20分余りの陳述を堂々とやりました。それを聞いていますと、ほんとに今の農業というものがどんな位置にあるのか。お偉方、政府などでは「GDPの1.5%にしかならない農民のために、98.5%を犠牲にするのか」「TPPを進めるんだ」という大臣などがおるようですが、とんでもない。農業というのは、人間にとって本当に大切なものだということを、市東孝雄さんは、非常にはっきり言いました。聞いている3人の裁判官は、信頼できるかどうかわかりませんが、少なくとも3人共が一生懸命に聞いていました。最後に、「この土は単なる土ではないんだ、この土が30センチの厚さの豊かな土壌になるには10年、20年、30年の努力がいるんだ」と順々と言われ、「日本が生き抜くためには、この土を、農地を、農業を残さなければダメなんだ」と。
なるほど、そういう意味から言っても、今、TPPで燃えていますけれども、市東孝雄さんが正しいとつくづく思いました。最後に彼は、その土を箱に入れ裁判長にもって行って、「触ってくれ、ほかの土と違うんだ」と。私は非常に胸をうたれました。
これからの日本の将来を、今のままいきますと農家は、どんどんどんどん高齢化して、働く人がなくなる、農地を手放す、農地を買い占めて会社が経営して農地でなくなる、そういう風になってしまう。そういう状態にあります。それだけに、市東さんが闘うように、福島の人たちも一緒に、沖縄は沖縄でほんとに人として許されないような差別が行われている。こういうことに対し、みんなが一緒に闘わなければいけない時代だと思います。
わたしは歳をとっていますが、常に闘いの端におりたいと思います。みなさん、一緒に頑張りましょう。
【注】1963年、山本先生は関学高等部の教頭に着くと同時に、1年生に週1回の「同和教育」の時間を始められた。先代の教頭とともに部落解放同盟の地域や青年部と交流のあった先生は、狭山事件の地裁死刑判決に対し(1964年)、すぐに「おかしい、冤罪だ」として、多くの教師仲間の批判をものともせず、その授業の中で生徒に訴え続けられた。
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