日本経済の破綻の象徴 (『おしらせ』92号より転載)
日本経済の破綻の象徴、港湾貨物取り扱い量の激減
ヒト・モノ・カネの流れを失ったアベノミクス
右の表は、朝日新聞が神戸港の活性化に向けた日銀神戸支店の提言を報じた記事(2013年11月27日付)に掲載されたものです。朝鮮戦争当時世界1の貨物取り扱い量を誇った神戸港が、1980年には世界3位(以降はコンテナ取扱量)、1985年には同5位、1995年(阪神大震災の年)には同23位、2005年には同39位、2012年には同52位と留まるところをしらない転落状態が明らかにされています。子どものころに、「神戸港は世界1だ」と地元自慢を叩き込まれた身には、ある意味感慨を覚える数字です。
しかし、この表を見て重視しなければならないことがあります。一つは、1980年に1位だったニューヨークが1990年には5位以下に転落し、同じく2位だったロッテルダムも2005年には5位以下に転落。欧米の港に代わって、上位5港は全てアジアの港が押さえています。これはアジアの経済発展が、中国の驚異的な成長を軸に進んだことを示しています。
第2に、そのアジアの巨大な成長の中で、日本の港が東京、横浜、名古屋を含め、大阪、神戸も軒並み転落しているという惨状です。現在、日本最大の取り扱いをもつ東京港が、1995年の12位を最後に、転落を続け現在は28位なのです。これが経済大国、GNP世界3位といわれる日本の港湾における「ヒト・モノ」の流れなのです。
左下図は、同じ朝日新聞のアジアの港湾の激しい競争の現況を示した図(13年4月11日付)です。日本の港は、東京・横浜をあわせた京浜港、大阪・神戸をあわせた阪神港として表示されていますが、それでもごくごくわずかにしかなっていないことが示されています。しかも、この図には成長著しい中国の深チェン(世界4位)が省かれています。深チェンを含めてこの図に表された総量の中でも、京浜港は5%、阪神港は3%を占めているだけです。アジアの港湾はこれら以外にも沢山ありますから、日本のコンテナ扱い量は、アジア全体の5%程度だということです。
上海や釜山をはじめこれらの中国や韓国のアジアの港における整備の凄さと、利用料の安さから、この状況は日本にとって現在の1995年以降の状況が示すように悪化することはあっても改善することなどはありえないとしか考えられません。
安倍政権が、アベノミクスの幻想(すでに破れ目が見えるとはいえ)を振りまきながら、他方で、国家安全保障会議設置法の成立を強行し、今また「特定秘密保護法」成立へ突っ走っている、あるいは年明けの通常国会では「共謀罪」をも成立させ、改憲クーデターによる強権国家の成立、人民支配強化を目論んでいるその根拠が、この港湾における取り扱い量の激減、アジアの中で完全に立ち遅れ、取り戻しようもないこの現状に追い詰められ、「また再びの道」である戦争衝動、侵略への衝動に駆られているからなのではないでしょうか。それは、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟衝動と日米安保(軍事同盟)=属国化による徹底したアメリカ追随の結果とは言えないでしょうか。
毎日5500万円もの巨額の税金を注ぎ込みながら、にっちもさっちも行かない増殖炉もんじゅの維持を図り、放射性廃棄物の再処理過程を何がなんでも維持しようとするのは、プルトニウムの保持による核戦略からであることが明らかです。福島原発事故の原因の究明も廃炉の過程も、現在の垂れ流され続けている放射能の問題も何一つ目処が立たないまま、いや、それらを闇から闇に葬ろうとしながら、原発の輸出を具体的に進める安倍政権の意図もまた、アメリカの核戦略に追随しながら、戦争、侵略への衝動を隠そうともしていないと見るべきではないでしょうか。
私たちは、この港湾における明確な破たん、アベノミクスの虚構に示された安倍政権の政治を断じてゆるしてはなりません。何よりも、福島事故で今も避難を余儀なくされている16万といわれるみなさんをはじめとした福島の人々、わけても子どもたちの未来を守るために、全力で立ち上がろうではありませんか。また、沖縄選出の自民党国会議員を恫喝し、「県外移設」の旗を下ろさせた強権政治を断じて許してはなりません。年内の仲井真知事の屈服を迫る安倍政権の政治を許さず、1月名護市長選挙で、「辺野古新基地建設反対」を掲げた稲嶺進市長の再選をなんとしても勝ち取ろうではありませんか。そして国策をかかげ、農地を守るべき農地法で市東孝雄さんから農地を奪い取ろうとする成田空港拡張の蠢きを断じて許してはなりません。3月26日、市東さんの農地に係る行政訴訟・農地法裁判控訴審第1回口頭弁論闘争に全力で結集しよう。また伊方原発をはじめとした原発再稼働を絶対に許さず、すべての原発の廃炉に向け闘おう!
(住民の会事務局長 松原康彦)
(新空港反対東灘区住民の会機関紙『おしらせ』第92号 2013年12月7日発行より転載しました)
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