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2012年5月17日 (木)

LCC(格安航空)は危険か?

12517lcc 左は今朝(5月17日)の朝日新聞の記事です。成田空港や関西空港の不調の中で、LCC導入を水路とした現状へのキャンペーン記事か? と思えなくもないですが(記事をクリックしていただければ、大きくなって読めます)。ご存知のように、成田空港と関西空港がLCC導入に活路を見出そうとしているように言われています。
 先日の「格安バス」の多くの死者を生んだ大事故からの類推で、「新自由主義の流れであるLCCは安全性を無視した儲け一本で危険だ」という「論」が、成田空港反対や関西空港反対を言う私たちの中から出ています。そうなのでしょうか。

 航空産業は、第2次世界大戦後に大きく発展します。しかし、自動車や電機などの他の産業に比べてその産業規模ははるかに小さく、戦時中の戦闘機や爆撃機の生産と戦禍を受けなかったことで世界の航空業界で圧倒的な優位性をもっていたアメリカでさえ、「脆弱な幼稚産業」と位置づけ、国によるCAB(民間航空委員会)の徹底した保護政策で守られていました。1944年、廃墟の中から立ち上がったヨーロッパの航空産業はさらに厳しく、それ以上の各国政府による過剰とも言える保護政策に守られ育ちました。敗戦によってそれから7年も遅れてスタートした日本の航空産業はなおさらで、運輸省による異常なまでの保護政策の下で、日本航空などの利権が育てられ破綻していったことは皆さんが知るところです。

 しかし、1970年代の世界的な不況の中で航空業界のナショナルフラッグといわれた大手航空会社と空港の経営が破綻します。ジャンボをはじめ様々な機種をもつことと保護政策による膨れ上がった経営手法にその破綻の原因があるとする批判の中から、アメリカのCABの解散と国内の航空自由化、イギリスの国営空港の完全民営化などが始まりました。正に、新自由主義の始まりでした。
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 その試行錯誤の中から生まれたのが、アメリカのサウスウェスト航空に代表されるLCC(格安航空)でした。それは現在言われるような「安かろう、悪かろう」ということではなく、航空業界における明確なビジネスモデルの変更でした。右の表にあるように20年あまりの経過によって、今では国際線はライアンエアが、国内線ではサウスウェスト航空が世界のトップですが、いずれもLCCです。
 『空港の大問題がよくわかる』(2010年3月 光文社新書 右表も同書より転載)では、「航空自由化とサウスウエスト航空の成功を機に、アメリカだけでなく、欧州、アジアでも、LCCが多数設立されるようになった。現在では欧州域内にはLCCが60社も存在し、年間1億5千万人もの乗客を輸送、欧州の定期航空市場の35%を占めている。特にイギリス国内の航空市場では、いまや6割をLCCが占めている」と紹介しています。
 P159
 また、『エアライン敗戦』(中公新書クラレ 2010年3月)では、「ビジネスモデルを確立した社は安全性が高い」として左の表を掲載し、記載されたLCC各社が「墜落事故を起こしていない」と紹介しています。もちろん、コスト削減のために中古機を購入して創業したLCCもあるようですが、そのような会社はすぐに潰れたそうです。LCCのビジネスモデル(経営手法)について述べることは省略しますが、例えばサウスウエスト航空は、航空業界の世界的な不況の中で、現在まで利益を出し続けています。
 航空政策の保護主義的規制を維持し続けた日本の国交省は、世界的な航空自由化の圧力の中で、自由化への舵を切らずを得ず、航空法を1985年に改正しました。しかし、安全性の審査などを複雑にすることで新規参入を阻止することでその保護主義を守ろうとしてきました。しかし、成田空港(首都圏空港)の破たん、関西空港の破たんに追い詰められ2000年にさらに航空法を改正し、成田・羽田を除く航空自由化を行いました。この時に、航空機の補修(安全性)について「自社で行わなければならない」という規制がはずされ、今ではJALでも中国の下請けで補修と点検が行われていると言われます。これによって日本でも、スカイマークなどが誕生できたのです。(この後、さらに追い詰められた国交省は、2007年、成田空港の自由化に舵を切りました。)

 航空会社は、ナショナルフラッグの時代は別として、民間会社です。ひとたび航空機事故が起これば、その補償問題によって保険会社だけでなく、航空会社自体がふっとぶことになり、安全性は非常に重大な経営問題です。ですから、冒頭述べたような「格安バス」の事故からの類推は、「少し違う」のではないかと思うわけです。もちろん、航空会社の安全性に対する立ち位置を信用するわけではありません。1985年のJALの御巣鷹山事故に象徴されるように、LCC、フラッグキャリア(大手航空会社)に関わりなく、労務管理や安全性への資本・経営者の立ち位置によって大きく揺らぐものだろうと思います。
 

 ここで言いたかったのは、LCC(格安航空)とは何なのか、そして関西空港と成田空港へのLCCラッシュともいえる現象は何なのか、今一度じっくりと見極める必要があるのではないか。航空業界と国の航空政策における事実と現実を見すえないで、いたずらに決めつけることは私たち自身の運動のあり方、また多くの人に関心を呼び起こせるかの重要な分かれ目となるのではないだろうかと思うからです。

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