« 耕作権裁判を傍聴して | トップページ | 今週の産直野菜(4月14日) »

2012年4月15日 (日)

福島に行って

 9日の夜にいわき市に入り、13日に神戸に帰るまで福島を初めて訪ねてまわりました。昨年の3・11から1年1ヶ月も経って、「あの時に来なくて、今さら何をしに来たのだ」とも言われました。私の中にも「何のために行くのだ」という声もありました。しかし、何ができるという展望がなくとも「現場に立ってみたい」「現場から自分の、自分たちの立ち位置を見つめたい」という素朴な願いのようなものを抱いて千葉での市東さんの裁判の後、福島に向かいました。

 12412 10日、いわきで最初に塩屋崎灯台に出かけ、海岸に近づいたとき、目の前の光景が一瞬理解できませんでした。しばらくして「津波の痕だ」とお腹にまで入ってきました。この後お会いしたAさんから「いわきの海岸は50キロあり、その全てがその状態だ」と説明を受けました。その衝撃は、翌日、南相馬で、翌々日、南相馬から仙台までの海岸線近く(右写真)を走ることで、いよいよ強まりました。見渡す限りの干拓地などが、あぜ道も失い、だだっ広く続きます。12411 残った家の残骸、大きな老人ホーム『ヨッシーランド』(南相馬市)の残骸。あるいは、自動車のガレキが並べられている光景は、その破壊の凄まじさを感じると共に、その自動車に乗っていた人はどうなったんだろうと思い、説明を聞いただけでも気が滅入ってしまいます。巨大な送電線の鉄塔が建て直されており、写真のように電線が未だにありません。
 まったく地理不案内ですので頼るはカーナビ。12410 しかし、常磐道の広野インターで立ち入り禁止区域のため強制的に下ろされました。そこから県道35号線で進むと再び立ち入り禁止による道路の封鎖。Uターンをしたらカーナビは混乱したか「道が見つかりません」と。そこで放射線量を測ると0.78μSv/時(2日前の神戸の8倍)でした。
 福島市内は0.18μSv/時、しかし渡利地区の国道では0.73μSV/時と高い。県道12号線で峠を超えて飯舘村に入ったとたんに1.20μSv/時、県道沿いの市ノ沢で2.04μSv/時、峠を越えて南相馬市に入ったとたんに0.74μSv/時でした。12411_3 飯舘村の中を国道399号線を南下していくと、その値はどんどん上がり、村役場の先の峠では、6μSv/時を超えます。浪江町近くの国が設置したモニタリングスポットでは、前日10.0μSv/時(87.6mSv/年)を記録していました。
 飯舘村の中の老人ホームや幾つかの企業は営業をしていますが、そこに通う職員や従業員は被曝しに通っているようなものだと教えられました。村の家々は、人がいないとは感じさせない佇まいをもっています。12411_4 つい最近出版された『飯舘村は負けない』(岩波新書)に詳しく紹介されていますが、他の村落との併合をせず、村として農業、牧畜などを通して「飯舘ブランド」を生み出し、人口さえ増え、豊かな農業の村として成功した歩みが注目されてきた(右写真は立派な村役場)最中に、まともに放射能の襲撃を受け、しかも政府が情報を流さなかったばっかりに、まともに被曝の被害を受け、全村避難を強いられている現実に怒りを新たにしました。12411_5 1年前には、数十倍からの放射能の中で子どもたちが、それも知らずに遊んでいたのですから。
 南相馬ではA&S福島(アクティブ&セイフティ福島)の責任者の神谷さんにお話しを伺うことができました。国、行政が復興を言う時、人の生命やくらしは眼中になく、町をどう立て直すかということに目が行ってしまっていると神谷さんは指摘されます。阪神淡路大震災を経験した私にも思い当たる指摘でした。A&S福島では、昨年7月と11月に左上の写真のように市民の力で市内すべてのポイントで放射能を測定して『南相馬市放射線量率マップ』を作り、市内各所に配布しておられます。12411as この4月半ばにも次の調査を行われるそうです。また、自前の測定器で市民から依頼のあった食品や水の放射能の測定を2つの機械を比較して使いながら行なっておられます(右写真)。最近は、飲料水についての依頼が多いとのことでした。

 私が垣間見ることが出来た地域は、津波被害から言っても、放射能被害から言っても、ごくわずかでしかありません。しかも、限られた時間の中、それほど多くの人にお会いすることもできませんでした。阪神淡路大震災でさえ考えることのできなかった気の遠くなるような時間と労力、努力を必要とする福島、東北の現実にあらためて自分が、自分たちが出来ることを考えさせられました。三里塚、沖縄を闘いながら、常に、福島、東北に向き合い、寄り添うようなあり方を作り出していくことの大切さを改めて思いました。
 今回の訪問で、神谷さんや案内をしていただいたOさん、いわきのAさん、また福島とのつながりで弾圧された唐住さんのことでお世話いただいたWさんやIさんなど多くのみなさんにお時間をとっていただいたことを心から感謝いたします。

 昨日、福井の大飯原発の再稼働に向けて野田政権、枝野が動きました。それも300人を超える人々が結集した抗議を恐れて裏口から県庁に入り、ダミー車の陰に隠れてコソコソと脱出する現実を前に、あらためて怒りとともに私たちが置かれている立ち位置の大切さを感じざるをえません。
 福島の人々の生命とくらしを守り抜き、津波に奪われた広大な土地を、復興の名のもとに農業破壊とTPPなどの政策でしたい放題させることなど断じてあってはなりません。
 明日、大阪・中之島の中央公会堂で「TPP反対」を掲げた集会が開かれます。この取り組みを足がかりに、関西でも、TPPに反対し、福島・東北のみなさんと共に新しい未来を勝ち取るよう進んでいこうではありませんか。

 さすがに疲れから体調を崩し、当ブログがお休みしたことをお詫びします。

 

|

« 耕作権裁判を傍聴して | トップページ | 今週の産直野菜(4月14日) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 耕作権裁判を傍聴して | トップページ | 今週の産直野菜(4月14日) »