12・10市東さんの会シンポジウムに参加して
12月10日、千葉市文化センターで『人の命か、「国策」か 12・10市東さんの会シンポジウム』が、120名近い人が集まって開かれました。ちょうど同じ時間に東京の日比谷で、大江健三郎さんなどが呼びかけた「さようなら原発・1000万人アクション」があり(5500人結集)、どうかなとちょっと心配したのですが、去年を上回り、新しい顔が沢山お見えになりました。やはり、フクシマの事態とTPP問題が、一人ひとりの生活に深く関わり皆さんが自分の意志で立ち上がっておられることを感じさせました。
集会は、足立満智子成田市議の総合司会で始められ、まず「“ナリタ”国策はばむ農地」という直近の市東さんの闘いを紹介する映像です。冒頭10月30日の芋掘り大会に招かれた福島の子供たちが歓声を上げて遊ぶ姿から始まり、8・6天神峰現闘本部破壊と第3誘導路建設工事の様子を紹介。さらに市東さんの畑での「市東さんの会」の現地調査の様子や今年の秋の高温と集中豪雨などの中での作柄などが紹介されました。 最後に先日の行政・農地法裁判での市東さんの気概あふれる挨拶が紹介されました。
その後、「市東さんの会」事務局の三角忠さんが聞き手になって、市東孝雄さんが語られます。
冒頭「福島だけでなく、各地の農家の方々との交流をこれから作っていきたい」と闘いへのイメージを語られました。そして8・6本部破壊に対しては「団結街道封鎖の時もそうだったが、人がいなくなる時にかぎってやってくる」「『国策』なら昼間堂々とやればいいのだ。そこがおかしい」「立ち会いもなく、執行官が弁護士に会おうともしないのもおかしい」「8・6破壊は自分の畑への、いつでもやるぞという脅しだろう」と。5・20不当弾圧について、「拘留された警察で、取り調べた警察官も『おかしいよね』と言っていた。ひどいものだ」と。そして最後に「『国策』だから当たり前だという傲慢な態度で、沖縄でも福島でも住民が不利益をうける。こんなことに負けられない」と決意を明らかにされました。
ここで、裁判事務局から、裁判の現状についての報告と訴えが行われていったん休憩。
第2部はパネルディスカッション「フクシマ、沖縄、成田をつらぬく棄民政策・農業つぶし」ですが、牛の競り市があるために来れなくなった福島県いわき市の畜産農家、斎藤栄一さんに電話インタビューです。 スクリーンには斎藤さんを紹介し、福島の現状を紹介する写真が次々と映されています(左写真は、家族が故郷を離れた家で、放置された豚たちが何かを食している)。
斎藤さんは双葉などでの牛や豚が放置され亡くなっている惨状を語られた。横浜に避難させていた小さい子供が8月に戻ってきて家の中にこもっている様子なども。堆肥が溜まって持って行き場がないことと、年老いて子牛を生むことができなくなった牛の処分(売る)ができず、世代交代に困難が生まれていることで困っている。国や県は何もしてくれない。年よりも、子どもたちや知り合いに米や野菜を贈るのを楽しみにしていたのに、できないので嘆いているなど。
今度はパネルディスカッションです。 パネラーは坂本進一郎さん(秋田県大潟村)、市東孝雄さん(千葉県成田市)、小川浩さん(千葉県匝瑳市)、金治明さん(キムチミョン・沖縄県名護市)の4人で、農民新聞の林伸子さん(市東さんの会事務局)がコーディネーターです。
各パネラーの自己紹介の後、先ず「市東さんの農地を守る沖縄の会」のキムさんから、半年ぶりに再開された高江でのヘリパッド建設強行という中での、先日の田中前防衛局長の差別暴言に対する闘いの様子が報告されました。そして半年前と違って絶対に重機を現場に入れさせない闘いが続けられていると。 一方で辺野古区で、8割以上の県民が新基地建設に反対する中、侵略者としての政府の動きに呼応して辺野古区でのテント村撤去の攻撃が誘致派の反転攻勢として開始されていることが報告された。これを背景に政府が環境アセスの最終報告を出そうとしていることへの闘いがこの日10日にも沖縄で取り組まれていることが報告された。
つい先日2000名のJAによるTPP反対集会が開かれたが、TPPの強行は砂糖黍産業を壊滅させ、離島の人口を激減させるだろうと言われている。さらに、現在のLCCによって成田・那覇間が980円で飛ぶことが示すように、TPPによってヤマトの大手企業による沖縄の観光植民地化が進むとしか考えられず、大変なことになると。
放射能ということについては、「思いやり予算を被災地に」という10万署名運動が続けられていることと、被災者を受け入れて行きたいが、沖縄は安全ではなく、9・11事態の中で言われたこと、原潜が出入りしているなどの現実を踏まえて来て欲しいなどと。
大潟村でコメ農家として40年やってこられた坂本さんは、TPP問題として思うことは、外交が下手だということと、自由貿易がひとり歩きしていることに警鐘を鳴らされた。12・8、負けると知りながら戦争を始めた。そして「戦争を進める」立場を表明すれば出世し、生きていけた。それと同じことが今、TPPで起こっていると。アメリカやオーストラリアの畑の面積を対比すれば勝負にならないことはあきらか。戦後の農政の中でアメリカの言いなりで、すでに米の部分的自由化まできてしまっている。農業つぶしの最終局面が今のTPPだ。日本が日本でなくなってしまうと恐怖さえ感じると。
農業と工業を対比させるのは酷な話で、ヨーロッパでは50年も前から戸別保障が行われていると。
三里塚から20キロの匝瑳市で40ヘクタールのコメ専業農家を営んでおられる小川さんは、「私のようなコメの専業農家がTPPでまっ先に淘汰される」と語られた。 その上で、ねっからの自由貿易論者の野田が、具体的には何もはっきりさせないで国益のためと「参加してみないとわからない」とすることを批判された。そもそもTPPをやらなくてもこのまま行ったらダメになるというが、そんな農業に誰がしたのだと。この20年で農家も半分に、農産物価格も半分位になってきたのは、市場原理主義がもたらしたものだと。高齢者がダメなのじゃなくって、高齢者が必死で支えて自給率40%が維持されているのだと。オバマが雇用の創出といっているのは、日本市場を狙っているからだ。担い手農家が一番打撃を受ける。メキシコを見ろ。
汚染された稲藁を牛に食べさせたと農民を批判する声があるが、東電の責任を棚上げしたそうした議論は農民を冒涜するものだ。原発をどうできるかということと共に農家も瀬戸際に立たされているとも。
市東さんは、オヤジが亡くなって帰ってきたが、土が好きなんで農家になってよかった。 昔の農家は本当に貧しかったから、オヤジは「手に職をつけろ」と外へ出した。「産直で食べれる」という方向づけができたので帰ってきたのだ。土地収用法が失効したから、ずっと農業をやれると思っている。
放射能汚染については、成田の隣の香取で出ているという中で行政の動きが遅かったと批判した上で、放射能ということに経験がないから、ずいぶん悩んできたと。堆肥の方はどうにか使えるが、床土からの落ち葉に放射能がでれば使えなくなり、有機農法が難しくなる。福島の人には悪いのだが、土にでれば使えなくなる。出ないで欲しいと。
(パネラーの発言は便宜上、それぞれにまとめました) この後、会場から山梨の山の中腹で果樹農家をやっておられる方など、多彩な方から質問や意見が飛び出し、あらためて「市東さんの会」がこの日のために大変な努力をされて準備してこられたのだなと感心させられました。しかし、3時間半を超えるのはいささか厳しいでしたが、「時間の経つのも忘れて」とはこのことでしょうね。
最後に群馬・市東さんの農地を守る会と市東さんの農地取り上げに反対する会からそれぞれ簡単な活動報告が行われました。
そして市東さんの農地取り上げに反対する会の共同代表の井村弘子さんから最後のまとめの挨拶が行われ、集会を終えました。
いつもは帰ることが付きまといますので、交流会(二次会)の途中で失礼するのですが、今回は昨日報告したように翌日も三里塚に伺うことになっていたので、市東さんの会のみなさんと4次会までにぎやかに楽しむことができました。ありがとうございました。
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