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2011年11月 5日 (土)

里美さんレイプ事件 控訴審判決

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 昨日大阪高裁で、里美さんへのレイプ事件の控訴審判決がありました。大法廷201号を埋める支援者が詰めかける中、加害者Kの「犯罪」を認め100万円の支払いを命じる逆転一部勝訴の判決がありました。

 事件は2007年2月、脳性小児マヒの後遺症で障害のある里美さんに対し、非正規(障害者雇用枠)で勤務していたJR西日本の職場の日帰り旅行の帰りに上司の加害者Kが、上司の立場を利用し、里美さんを酔わせ、ホテルに連れ込み、暴力的にレイプしたものです。Kは、その後も「誰にも言うな」と脅し、数度にわたりレイプを強制し、またJR西日本は、「セクハラ対策室」の男性が10時間にわたる事情聴取(「取り調べ」だ!)を強要し、「何事もなかった」の一言で済まし、事件の隠蔽を謀ったのです。

 これに対し里美さんは、加害者Kの責任を損害賠償という形で問うとともに、JR西日本に対しても使用者責任などによる損害賠償を求めて立ち上がりました。

 孤立した闘いを強いられた第1審(神戸地裁龍野支部)は、里美さんの訴えを加害者の言うままに「合意のもとであった」と断じてすべてを退ける不当判決でした。この経過の中で、里美さんの訴えを伝え聞いた人々によって「里美さんの裁判を支える会」が立ち上げられ、またその過程で里美さんが関西合同労組の組合員となりJR西日本に対する労働争議としても取り組まれています。

 そして毎回法廷を溢れる支援者による傍聴闘争がこの1年近く続けられ、幾度もの街頭での訴え、JR西日本の姫路や本社前での抗議の訴え、そして9千名近い裁判所への公正な判決を求める署名が寄せられ、この日の判決を迎えたのです。

 10時間にわたるJR西日本の「セクハラ対策室」による「取り調べ」を、里美さんがカバンの中に入れたICレコーダーで録音していたので、それを支援者が手分けして掘り起こしたものが、「法廷での里美さんの証言と一致する」として決定的な証拠となって、高裁・坂本裁判長に、逆転・一部勝訴の判決をなさしめたのです。私も40分余りを担当しましたが、16時間以上かかりました。しかし、その内容は、正に予断を持って事件を隠ぺいしようとするJR西日本の意図を露骨に示す「事情聴取」に名を借りた悪質極まる「取り調べ」であり、里美さんに対する拷問と言っても過言ではないような内容でした。

11115  しかし、とても判決の中にある「一部不適切な言動があったが・・」といった程度のものではありませんでした。この証拠を採用し、里美さんへの加害者Kの「犯罪」を認定しながら、JR西日本の「使用者責任は問えない」とした判決は断じて許せません。「アフター5での行為は会社は関知しない」とする裁判所の判断は、会社の上下関係を前提としたセクハラの場合、間違っているとの「報告会」での糾弾が行われましたが、その通りだと思います。(右新聞記事は、2011年11月5日付 朝日新聞。画面をクリックしていただければ大きくなり読みやすくなります。)

 さらに判決では、2回目以降のレイプの強要は、「恋愛感情の発生」と断じて請求を棄却していますが、「報告会」で女性の方が、「レイプされた女性が、加害者に恋愛感情を抱くなどありえない。男性社会の虚構だ」と弾劾されました。この判決での判断が、賠償金100万円という、事件の内容に比して金額があまりにも低い(記者会見後の、マスコミによる聞き取りの中で、記者の意見として)ことを生んでいるのではないかと弁護団も指摘しておられましたが、到底許せるものではありません。

 また、里美さんが「JRのロゴを見るだけでもからだの震えがあり、見るのもつらい」とPTSD(外傷後ストレス障害)の被害を訴えておられたのですが、裁判所は、「命の危険を感じさせる事態」と「無意識に回避する」そういったPTSDの条件を満たさないとして請求を退けたが、これではPTSDの患者は裁判を訴えられない、訴えるなと言うに等しいと弁護団は弾劾されました。また、「報告会」でカウンセラーの専門家から「裁判長のPTSDへの理解は、常識で考えられているものから50年も遅れている」と弾劾されました。

 判決後、多くの皆さんが残られ、場所を移して、弁護団による判決文の解読と記者会見の間待機することを兼ね、里美さんと弁護団が帰ってきてからを含め、3時間を超える「報告会」が開かれました。事務局からの判決文を読みながらのコメントの後、参加されたみなさんからの発言、そして、駆けつけた弁護団、里美さんご自身からの発言、再度の参加者からの発言が続きました。特に、一人の方が「裁判長が人間としてわずかの想像力でもあり、それを十分に発揮されておれば、こんな判決にはならない」と、裁判官自体にある差別性を糾弾されておられましたが、「裁く」という虚構の決定的な欠陥を指弾されたもので、本当にそうだと思いました。

 自分もレイプされた被害者のみなさんとか、娘がレイプされ何度も自死を試みたというお母さん、あるいはJR(国鉄)職場の男性社会のひどさ、差別性などがこもごも語られました。この社会の女性差別、障害者差別の現れとして、里美さんへの今回の事態があったことが重苦しい想いの中で確認されると共に、激しい怒りをこめて、共に変えていこう、里美さんを支えたいという強いメッセージが込められていました。

 また今回もそうなのですが、多くのこうした事案で、「携帯メール」が重要な証拠として使われることに、「首になったら困る」という被害者である非正規労働者の立場がさせる「つなぐためのメール」という現実を、裁判長、裁判所が理解できていないという問題点が弁護団から指摘されました。

 里美さんは、一部とはいえ一審の判決を覆せたことを率直に喜び、支援者への感謝を繰り返し口にされました。そしてJR西日本の責任が不問に付されたことへの怒りと、レイプされた女性が堂々と背筋を伸ばして生きていける世の中にしたい、「自分も何度もそうだったが」とされながら自ら命を絶つことのないように頑張ってほしいとメッセージを発せられました。そして「自分の中にあるPTSDと向き合うために裁判を闘ってきた」と語られて、最高裁への上告の決意を明らかにされました。

 厳しい闘いになるとは思いますが、「里美さんの裁判を支える会」は、里美さんの想いと決意を全面的に支持し、ともに闘っていくことを確認して「報告会」を終えました。

 「里美さんの裁判を支える会」では、多くの皆さんがこの取り組みに賛同してくださることを訴えております。年、1口、3000円の会費です。振り込み先 口座番号 00940-3-171194 口座名 「里美さんの裁判を支える会」(当初、年会費1000円で始めましたが、裁判費用が多額になるということから現在は、年、1口、3000円になっております)。詳しくは、会のブログ「里美ドットコム」http://satomi-heart.cocolog-nifty.com/blog/cat22407389/index.htmlをご覧ください。

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コメント

行けなかったので固唾をのんで読んだ。
上告の費用をわれわれ支援者で支えよう!!!

投稿: 田中洌 | 2011年11月 5日 (土) 09時01分

今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。

投稿: ルイヴィトン 公式サイト | 2012年10月22日 (月) 21時55分

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