萩原進さんの農業への想いと福島・TPPへの怒り
すでに報じていますが、10月24日、市東さんの農地取り上げに反対する会が主催して「TPP(環太平洋経済連携協定)は『日本占領計画』!」と題した勉強会(講師・永田研二さん・右写真)が開かれました。講演のあとの2時間あまりにわたる熱心な討論の中で、反対同盟の萩原進事務局次長が論議されていた「食管法」などの論議に事寄せる形で自らの農業への熱い想いと、福島の農民への想い、そして原発事故を奇貨としてすすめられているTPPへの怒りを語られました。非常に貴重なお話しでしたので、全文(約11分)を無断で掲載します。(文責は当方「関実ブログ」管理人にあります。)
萩原進反対同盟事務局次長
一方あるけれども、食管には2つあったわけでしょう。消費者米価と生産者米価というのが。2重構造があって、そういうのをもってたわけですね。そこには労働者も強かったわけですよ。コメがばーんと上がるだけじゃなくって、それに対して政府に補償しろと。 それで逆ざやになって米価が消費者の方が安くなった。そういうのが通っていって政府が赤字にアップアップして赤字になってもうダメだと食管制度そのものまでポイしたわけです。
そういうところで先ほど秋田のことが出ましたけれども、自分もほんとにどっち支持していいか迷ったんです。減反てのは絶対ダメだと。だけど、あの時ヤミ米で、それを検問突破して消費者に届けた、それもねえ、ひとつの道じゃねえのかと、その時はね。これも支持せざるを得ないのかとね。あるいは食管制度をまもってコメを作っていくことがいいのか。ほんとにどっちを支持したらいいのかと思ったが、今になってみたら、ヤミ米やっていた人らはみんな商社になっちゃってね、コメそのものを商品として売り込んじゃってる。一方では食管制度守っていた人たちは、ほんとに借金抱えるようになっちゃった。
だからこれはね、両方ともそういう意味では、苦渋の選択を迫られたと言えるし、しかもそういう形でポイされてるんですよね。そういう状況があったんじゃないかと思います。
だからそういう意味で、農業そのものが、戦後、農地解放というのがあったけれども、それで半分以上の人が、ある人たちは中農という形でいいますけれども、日本の場合は小農ですよね。そういう形で、自分も自作農という形になってきたけれども、それだけじゃあ食べられないという状況があったんだけれども、努力する中で食糧難を克服する中から、せっせ、せっせとやってきて、給料格差というのがあったけれども、70年代の終わりから80年代にかけて何とか追いつけ、追い越せという形でやってきて、近づいたら一気にまた離された。
だからそれは30年前の、あるいは20年前のコメより安いコメが販売されているのと同じように、卵だって、あるいは生鮮野菜だってね、ずーっと同じですよ。卵が売り出しで1パック100円で買える、こんなのないでしょう。
そうするとやっぱり100羽飼ってたのが1000羽、1000羽飼ってたのが1万羽にしなくちゃしょうがない、10万羽にしなくちゃしょうがない、100万羽にしなくちゃ。これで鳥インフルエンザなんかがはやる。そうすると一気に潰れちゃう。牛でもそう。
だけど、日本の国土でそういうふうに出来るわけないんですよ。机上の上の計算で「規模を拡大していけばいい」なんだという話しじゃない。だから牛にしたって200頭、200頭止まりでね、何千頭なんて飼えるわけじゃない。それを今度は企業でやろうなっていったってね、それは絶対失敗するわけでね、これだけ南から北まで長い日本の中で、沖縄・九州でとれて、それが北海道までずーっと1年間続いていけばね、そういう意味では日本の農業というのは家族農業を主力にしながら、採算性では経済性の効率から見て非常に悪いか知らないけれども、そういう中から食というものを考えてみなさんに供給していくという立場をとって、自給率を高めていくっというのが、農家というのが絶対的に正しんですよ。
それを一律に欧米諸国の農民、農家という形で比べるけれども、よく出ますけれども、何百ヘクタールとか、何十町歩とか、あれは、地主は農家かもしれないけれど、そこで働いているのは農夫、つまり農業労働者です。そういう形になるわけです。そうすると日本はそんなことができるのかと言ったら、出来るところはないですよ。八郎潟でさえ、そういうふうにやって借金を抱える状況になっている。
そういう意味では自分たちは、空港問題を取り組んできて、北総の基盤の中心のところを空港を中心にしながら1040ヘクタールだけじゃないですよ、そのまわりを全部荒らされる。農業高校はなくなる。農業をやっていく人は、後継者がいなくなる。後継者がいないのは、農家が悪いみたいに言われるわけですよ。農家が後継者を作れるように見えない状況を醸し出して自然淘汰させてきた、そういうやり方が悪かった。それを全然反省しないわけでしょ。
そこへもってきて、今度は「安楽死」って形でありますけれども、TPPみたいなもんだ、これでもかというやりかた、これはひどいやり方だ。それ以外の何物でもないですよ。だから労働者もわかって欲しい。これを、今矢面に立っているけれども、これは農家の問題だけじゃありませんよと、労働者もそういう意味では攻撃されている。その中では、とりわけ食という問題を考えて欲しいんだと。これは「商品」じゃないんだと。要するに、人間が生きていくためにはどうやっていくのかという問題を真剣に考えなければならない。それが自給率20%、30%でまかなえるのか。それをもってくればいいという話しじゃないだろう。
それを証明しているのが、今の福島の状況がそうじゃないか。原発(放射能)に汚染されて、「さあ、福島のものは食べられませんよ」と、そう言って福島の農民は背を向けられているわけですよ。関東の農民もそこまで含まれた。それじゃあ、九州と愛知から向こうの野菜だけを集めてきて、それで「安全ですよ」とやればいいのか。そうじゃないでしょう。
今、福島の人たち。作られた電力は、福島の人たちは一晩もその恩恵に預かっていないわけです。それを東京の人たち、関東の人たちが、その(電力の)もとにあって生活していて、しかも福島の人たちが被曝し、しかも今置かれている立場を抜きにして、「さあ、自分たちは安全な食べ物を食べましょう」なんて、そんなことは出来るのかどうか。福島の状況を作ったのは誰なんだということももう一度立ち返ってみる必要があるんじゃないか。
そっから福島の人たちと一緒になって、どうやってやるのか、農地を洗浄し、農業ができるか考え、そしてその厳しい中からも農業をやっていこうという人たちを育てていくということを今こそ考えなければならない。
そんな時に、震災と表裏一体のものというような形でTPPの攻撃を持ってくるな。こんな卑怯なやり方ないじゃないかと思う。これには本当に怒りがある。だから福島の人たちからとってみれば、もっともっと死に追い込むようなやりかたでしょう。
自分たちも放射能をめぐって、食をどうするのかというところで非常に悩み苦しみながら、消費者と対談し、福島の人たちとつながりを持っていこうとしているんです。そういう意味でいまこそ農民が手を組み、食べる側、労働者を含めて手を組んで、怒りを持って行かなければならない時代だと本当に思うんですよ。
この間も千葉で話がありましたけれども、「私は福岡から野菜をとっています」という形で言ってましたけれども、取るのは個人の選択の自由かもしれないけれども、取って食べる前に今までの問題をもう一度考えてほしいと。放射能を出したのは自分は全然責任はないのか、あるいは放射能の現実の中でどういう態度を取るべきか、この問答をして欲しいというのが本音だと思うんですよ。
だから、我々の飛行場の問題、これは「国策」という形で持ってきました。しかし、沖縄の基地と同じように、ある時には戦略的に「祖国防衛のために」と40万、50万の米兵を迎えざるを得ない。そんなことを我々は許せるのか。そのためにホテルが開放されるのか。そして我々から取り上げた土地がそういうものに使われるのか。市東さんはそのために、今農地を取り上げられようとしている。それを阻止するために自分は頑張っている。これは金の問題じゃないんだ。そう言って、せっせと作物を作っているわけですね。
この現状の中で、この末には福島の住民を三里塚に招いて一緒に収穫祭をやろうと計画を立てていますけれども、そういう中で、何としてもこの状況を克服していきたいという想いがありますので、一方ではみなさんのお力を拝借したいと、この場を借りてお願いしたいと思います。
(なお萩原さんの写真は、この日直前に開かれていた「耕作権裁判」の報告会でのものです。なお、今晩から三里塚現地に向かい、収穫祭に参加し、火曜日まで援農をというか、ほんとにお邪魔をしますので、ブログをお休み致します。)
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