JAL解雇撤回闘争の学習会に参加して
昨日、労組交流センター関西協議会が主催した夏季セミナーで、JALの解雇撤回闘争を闘っておられる裁判(乗員)原告団団長の山口宏弥さん(ボーイング777機長)をお招きした学習会が開かれました。日本の航空政策が破綻した中での象徴的な一つの重要な出来事という想いから参加させていただきました。
山口さんはまず、昨年8月の更生計画の発表に伴う9月頃からの仕事を奪われた厳しい状況の報告をされながら、日航本体の削減目標1500名に対して希望退職者が1733名に達し、削減目標が達していたにもかかわらず12月31日の時点で山口さんと同じような状況にあった乗員81名、客室乗務員84名全員が年齢と病気欠勤を理由に整理解雇された経緯を話されました。
その中から9割の乗員76名(当初74名)、客室乗務員72名、計148名が今年1月19日に東京地裁に乗員、客室乗務員にわかれて2つの裁判を提訴し、解雇撤回闘争が始まりました。「解雇されると世の中のことがよく見えるようになった」と語られながら話されます。「3分の1が非正規で、これからの日本がどうなるのだろうかと感じます」とも。
パイロットという仕事から期間があくことと再訓練といった期間を必要とすることから東京地裁には「迅速な裁判」を求められた。この9月には4回の法廷が開かれ、9月30日には稲盛日航会長を証人として喚問している。稲森は、1月の提訴時点で「清心誠意話し合う」と言いながら、会うどころか5度にわたる要望書に応えてくることすらしていない。2月には「165名を残すことは経営上は可能だった」と不当解雇であることを認め開き直っている。
裁判の目標は、現職復帰を世論のもりあがりを背景に獲得したいと言われた。その点で、整理解雇まではさんざん報道をしながら、整理解雇が行われたとたんにほとんど報道しなくなったマスコミの姿が、広告料で縛られた電力会社(原発)をめぐるのと同じ問題があることを告発された。
そして先ず「稲盛さん自身が経営上問題ないと言っている。本来ならこれで勝負ありのはずだ(右写真2010年度、過去最高の営業利益)」と。2つ目に整理解雇をする前に解雇の回避努力をしようとせず、組合からのワークシェアリングや一時帰休などの提案も無視し、出向や再就職支援も全くしなかったことなどを指摘されました。3つ目に解雇対象の人選基準が、年齢と病歴、組合経験など、明らかに労基法、国際人権規約、ILO条約などに違反していると。そしてパイロットにとって安全性などから「情報の共有」が非常に重要であるのにそれを破壊していると。
4つ目に手続きの妥当性として、特に昨年11月、日航の更生手続きを行うために選ばれた管財人、企業再生機構が「整理解雇を争点とする争議権を確立した場合、それを撤回するまで企業再生支援機構は3500億円の出資は出来ない」として、不当労働行為を公然と行なったことを弾劾されました。更生手続中であっても労働者の権利が制限されることはないはずだと。現実に東京都労働委員会は不当労働行為として認定し救済命令をこの8月3日に交付しました。 行政処分であるこの命令に応じようとしない日航の現在の姿勢を厳しく断罪されました。そして日航がこれまでも数々の不当労働行為、客室乗務員の昇格差別、さらには9862名におよぶ客室乗務員の個人情報収集の実態が明らかになった「JAL客室乗務員監視ファイル事件」など異常な労務姿勢が断罪されてきていることを紹介されました。
そしてこうした事の背景として日航の経営破綻を指摘し、その原因としてアメリカとの間の貿易不均衡解消の名のもとに行われた各地の新空港の建設や滑走路の2500メートルへの延長(「パイロットとしては助かるのですが」と言われながら)の問題など、あるいはジャンボなど大型機材の購入などと、長期ドル先物予約で2200億円の損失を出したとかホテル・ゴルフ場の世界各地での乱開発の失敗、国内での45億円ものゴルフ会員権を獲得など日航の放漫・乱脈経営と、空港整備勘定(昨年、JALもANAも、1700億円の空港税を払っている)や無駄な空港建設に象徴される航空行政のいろいろな誤りを指摘されました。
そして「今の公共交通機関の在り方が問われている」と指摘されました。安全性と公共性、技術の共有、伝承が弱ることで安全性が損なわれていると。そして航空法にも「安全性の向上」が求められているにもかかわらず、稲盛会長が、「安全性重視というのは本末転倒だ」「利益を出して余裕がなければ、安全を担保出来るわけがない」(2011年5月16日付、日経ビジネス誌インタビューで)と主張するのは許されないと断罪し、「安全・安心な公共交通機関として再建を目指すべき」だと指摘されました。
最後に、11月の結審、来春判決の見通しを語られた上で、負けない、勝つまでやりぬくと支援を訴えられて1時間あまりにわたる熱弁を終えられました。
30分あまり熱心な何人もの質問に答えられた上で、あとの予定があり中座されました。集会は、このあと交流会が続けられ、私の方から8月30日の市東さんの「行政訴訟・農地法裁判」の重大性と、9・18三里塚関西集会、10・9現地総決起集会の重大性を訴えさせていただきました。
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コメント
たまたま拝見致しました。 確かに理解出来る内容も多いです。 しかし現代はコストに聖域はないと、私は考えます。
解雇理由は色々あり、能力・勤務状況だけではないと思いますが、選考された事も真摯に受け止め、次の人生に進む事が必要と思います。
民間企業で働くとはそんな者です。
リターンを望むなら、リスクは当然と思います。
投稿: 会社員 | 2011年9月15日 (木) 19時54分