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2011年6月 2日 (木)

『水と緑と土』を読んで

Photo  福島原子力発電所事故の果てることのない現実と被災者のみなさんの苦しみを見るにつけ、三里塚農民への「空港建設」の名の下での農地強奪の45年、そして農民、農業のを始めとした様々な分野への破壊をもたらすものでしかないTPP(環太平洋経済連携協定)を見るにつけ「国策」の名のもとに進められるものへの怒りとともに、自らの不甲斐なさをも痛切に感じるこの頃です。

 そんな折に友人から進められて読んだ、『水と緑と土-伝統を捨てた社会の行方-』(富山和子著、2010年改版 中公新書)に大きな感銘と勇気をもらいました。

 著者は、「おそらく世界のどの国にも増して、日本ほど豊かな地力を誇ってきた国はなかったであろう。放っておいてもひとりでに緑の育つこの国の土壌は、その沃土を失わぬため懸命に取り組んできた日本人の土の労働に支えられて、一方では優れた林業や農業の技術をはぐくみ、他方ではその技術が生かされて単位面積当たり世界一という収量を実現させた。それが、この国土に文明を絶やさなかった秘密だった。  にもかかわらず日本ほど、その誇るべき資源をあっさりと放棄してしまった国もない。アメリカは依然として食糧を自給し、自国の土壌を守るために膨大な国費をさいて余剰農産物を他国へ売りつけ、国内の市場価格を支えてきた。西ヨーロッパ諸国もまた、手をたずさえてその攻勢を防ぎ、自国の農業の振興に精力的なエネルギーを注いでいる。それにひきかえ、自由化を歓迎して自国の土壌を見捨て、その土地の上に大量の原料と食糧とを他国から運び込んできた日本は、いま、あふれるばかりの廃棄物に悩まされながら、物質文明を謳歌している」(同書175頁)と明快にまとめています。

 水を全体の導きの糸としながら、自然と科学、文明論といったことをも含んだ著者の想いがつづられていきます。

 「現在行き詰っている問題の多くは、いずれも土に立脚せず、土地のバランスを大きく崩した土地利用に根ざしている。それは本書で眺めてきた諸問題にとどまらない。生産と消費との間に横たわる流通――交通問題にしても、スピードを必要とする大量の交通需要を増大させている原因は、もとをただせばその地域で完結されなくなった土地利用にある。それら現状の隘路を打開し、この国土に文明を維持させて行きたいと真に私たちが願うのであれば、この原則に立ち戻るべく新しい土地利用を求めて、努力するしかないであろう。それが後代への義務でもあろう」(同書の最後 198頁)。

 またこうも言われます。「人間の行うことのできる真の生産とは、農林漁業をおいて他に何があるだろう。工業――それは鉱業の上に成り立っている貯金の下ろし食いに過ぎないではないか」(同 193頁)。 これを「価値観の相違」で括ってしまってはならないのではないでしょうか。

 「残された資源は、いまもなおその守り手たちが懸命に守っている農地の土壌だけである。この最後の資源が失われた時、100年にわたってくりひろげられてきた列島改造の巨大な事業も、おのずから終止符を打つことになるだろう。土壌の生産力を失ったとき、いかなる文明もその地から姿を消すしかなかったことは、過去の歴史が証明しているからである」(同 158頁)とも。

 「早くから森林が払いつくされ、農耕や放牧それ自身が森林の対立者として作用してきたヨーロッパとは異なり、日本では農耕は森林の対立者とはならなかった。日本の農耕は森林の助けを借りて土壌の有機源を補い、森林の助けを借りて水源を求め、また水や風の被害からも免れた。このように、人間の生産活動である農業が、森林と有機的に結びつくことで一定の環境が形成され、それによってこの国土の自然と文明とのバランスが維持されてきたところに、過去の日本の環境の特質があり、日本人の土地利用の特質があった」(同 116頁)。ここを読んだとき、福島、宮城でその水産漁業が壊滅的に破壊され、放射能によって復旧のめどすら立たないことや、三里塚で300億円もかけて役にも立たない第2誘導路のために東峰の森が破壊されたことを思わざるを得ませんでした。

 6月11日の「脱原発100万人アクション」を1つの大きな水路として、私たちは、ここで富山和子さんが指摘されておられるように、私たちの生き方そのものをも捉えなおしていく歩みに大きく舵を切って進まなければならないのではないでしょうか。そのためには、国策を掲げ、60年以上も沖縄に差別的に米軍基地を強制し、各地に原発とともに生きていくしかない状況を強制し、成田空港の名のもとに農地強奪を45年も進めようとする、このような国を変えていかなければならないでしょう。

 ことのついでですが、最近これも読んだ本で、「文明の中心地は農法によって動く」「(古代農法)の復活が辺境の地から始まっている」として著された『文明は農業で動く-歴史を変える古代農法の謎-』(吉田太郎著 2011年4月 築地書館)も面白かったですよ。

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