6・18石橋克彦講演会
昨日18日、エル大阪南館ホールで、「若狭原発震災を防ごう~関西広域連合を無人の曠野にしないために~ 石橋克彦講演会」(グリーン・アクション&美浜の会主催)が開かれ、参加してきました。土砂降りの雨の中、会場のホールを一杯にする300人(?)の人々が集まっておられました。
1995年の阪神淡路大震災を前にして、その前年に「大地動乱の時代」(岩波新書)を書くときには、原発の問題が頭にありながらそれを踏まえて書くことを躊躇されたことを紹介しながら、1997年から「原発震災」を訴えてこられた経緯をまず冒頭明らかにされて石橋克彦さん(神戸大学名誉教授 67歳)は話し始められました。
「ほとんどの方が原発について詳しいのではと思いますが、初めての方もおられると」と、先ず原子力発電所とは何かから。思わず、時間が足らなくなると危機感をもちましたが、案にたがわず・・・。 先日、国会で参考人として話された時に、配ったのですという絵の画面(「日本の原発は『地震付き原発』 左写真、少しわかりにくいですが)には、思わず会場から爆笑。
田中三彦さんの指摘を紹介しながら、原発のもっとも重要な3つの機能のうち、3・11福島原発事故では、1号機で「冷やす」機能が、2号機では「閉じ込める」機能が最初の地震の揺れによって失われた公算が大きいことを示され、東電、政府、保安院、安全委が「津波原因説」で押し切ろうとしてきたことを批判されました。そして保安院が、事故を受けて3月30日に電力各社に津波原因説に立って「緊急安全対策」の実施を指示したが、これ自体が1964年に原子力委員会が決定した「原子炉立地審査指針」に「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また災害を拡大するような事象も少ないこと」が原則的に必要だと明記していることに明確に違反していると断罪されました。 余談ですが、昨日、海江田経産相が、「各地の原発の安全性が確認されたから停止しているものも動かしたらいい」と発表しましたが、笑止千万とはこのことでしょうね。原発立地県の各知事が「新しい内容無し」「論評に値せず」と冷たく突っぱねたことは当然でしょう。この国の姿勢は本当に許せません。
石橋さんは、「原発と地震」の問題を考える際に考えるべきこととして、「①原発の安全性は、莫大な放射能ゆえに、ほかの施設より格段に高くなければならない。②ところが原発は完成された技術ではない。③いっぽう地震は、最大級になると本当に恐ろしい。④しかし人間の地震現象に関する理解はまだ不十分で、予測できないことがたくさんある。」と上げられました。そして飛行機を例に挙げながら、「安全には『制御されている安全』と『本質的な安全』がある」とされ、「原発はひとたび大事故が起これば影響が非常に広範囲に及び、地球規模の汚染と未来世代への災厄を残す。 従って原発は、限りなく本質的安全を追及すべきだ」として、「それは設置しないことだ」と断じられたのです。
さらにマスメディアによる「大本営発表」のごとき報道と芸能人や「文化人」「専門家」が宣伝に動員されて、大多数の国民が「原発は必要で安全である」と信じ込まされていると指摘されました。そしてこれは「戦前の帝国軍隊にも似た絶対的善」とされており、その失敗によって大変な事態を招くとされました。
もちろん石橋さんは「アムールプレート東縁変動帯」という自らの学説を根拠とした地震学の話しをされました。「地表新断層」と「活断層」の話しなど、など。私が読んだ「大地動乱の時代」(1994年)に比べ少し表現を明確にしながらのお話しでした。その上で、多くの原発を進めた時代が、こうした地震学がまだ明らかにされていない前夜だったことと、たまたまその時代が地震の活動の静穏期だったために技術者が地震の恐ろしさを体験せず、技術的に取り込めると錯覚していたことを指摘されました。 また、「従来の原発の耐震設計が、『短い活断層は小さな地震しか起こさない』という誤った考えに立ち、電力会社は活断層をなるべく短く評価し、また無視しようとした」とも指摘されました。
最後に、本題である若狭の原発の問題に触れられました。最初の地図は、過去の大地震が考慮されていないことを指摘し、これを踏まえながら、活断層について関西電力の指摘のようにはいかず、東日本大震災でそうであったように、あるいは阪神淡路大震災でも野島断層と六甲断層が連動したことを上げられながら、幾つもの活断層が連動する危険性を指摘されました。
そして若狭の原発の事故が起こった場合、直接的な琵琶湖への影響だけでも「近畿の水がめ」であるだけに、 非常に広範囲に深刻な事態となることを指摘されました。神戸や大阪でもわずか100キロしか離れているだけですから、正に「関西広域連合が無人の曠野になる」と警告され、自治体行政を含めた広範な取り組みを訴えられて2時間余にわたる話しを終えられました。
石橋さんは『大地動乱の時代』以来、繰り返し「東京一極集中」の日本の在り方を批判され、「分散型国土の創生」を訴え続けておられます。これは、単に地震に対する対処の問題にとどまりません。新自由主義による効率、格差を是とする経済と政治がこの「東京一極集中」をますます局限化させていると言っても過言ではありません。航空政策における「羽田・成田」問題への傾斜も、正にこうした流れの中で、「成田空港の整備と拡大」にしか道を見いだせない国交省、政府の極めて強暴な三里塚農民のみなさんへの生活破壊、市東さんへの農地強奪、そして三里塚闘争解体の攻撃として現在激化してきています。沖縄への差別的な米軍基地の強制、そして東北など過疎地域農村、漁村への原子力発電所の強制、そして三里塚への成田空港の強制、これらの国策を断じて許さない一つの水路が、この日の石橋さんの熱のこもった講演の中にあったことを感じながら帰途につきました。
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