成田空港の位置
羽田空港の国際化によって成田空港の位置の低下がよく言われます。しかし、そうなのでしょうか。
国交省は、世界的な航空需要の増大という趨勢の中で羽田と成田が狭隘化してくるのを受けて、関西国際空港、中部国際空港をそれぞれ建設し、2007年には関西空港でさらに2本目の滑走路を供用開始しました。
関西空港と中部国際空港の国際線のこの5月の就航状況が右の表にあります(各社のホームページより)。若干東日本大震災による減便などの影響がある数字かもしれませんが、基本的傾向は変わらないと思われます。関西、中部などが自動車産業や電器産業の拠点であるだけに、中国に多くの便があることはあろうかと思います。しかし、それぞれの右下に書いていますが、アジア全体とハワイ、グアムなどが関空で82%、中部で90%になり、アメリカ、ヨーロッパ線があわせて共に9%にもなりません。明らかに「観光需要」に特化してかろうじて維持されていることが現れています。特に世界の金融の中心であるニューヨークには関空がチャイナエアラインが週3便飛ばしているだけで中部にはなく、ロンドン便は両空港ともありません。そして、驚いたことに日本のJAL、ANAともに、欧米便(ハワイ、グアムなどを除く)には1便も飛ばしていないのです。
つまり、ここには日本はもとより欧米の航空会社が、関空、中部を評価していないということが如実に表れています。航空会社にすれば、観光需要が急激に伸びている現状の中で、経営を維持するにはファーストクラスとビジネスクラスの確保が大前提となっています。関空、中部にはそうした需要がないから、日本と欧米の航空会社が敬遠しているということがこの現状の原因と考えられます。勢い関空、中部の空港経営自体が赤字に転落することもまた当然の結果です。
ここに羽田、成田の狭隘という問題をなんとか関空、中部の建設で解消したいとしてきた「作ればなんとかなる」という国交省の思惑は完全に破産しているのです。それは1周遅れと言われながらの「オープンスカイ」への舵きりでも何ともならないのです。
そこに羽田の国際化、成田の拡張による羽田・成田の一体運用という追い詰められた姿があるのです。世界の空港で発着回数の上位20空港を見ると(2008年のデーター)、アメリカの14空港が年間98万回から43万回にひしめいています。その間に、ドゴール(フランス)56万回、フランクフルト(ドイツ)49万回、ヒースロー(イギリス)48万回、バラハス(スペイン)47万回、スキポール(オランダ)45万回、ミュンヘン(ドイツ)43万回とヨーロッパの6空港があります。ヒースローは、3千メートル代の滑走路が2本の面積も成田と変わらない空港です。
単純に言って、今日、羽田・成田で合わせて30万回を達成できるかどうかでは、羽田が国際化したことなどこの全体の中でほとんど意味もないことは明らかでしょう。ますます経済大国日本で東京圏への1極集中が激化している現状の中で、世界の航空会社が、関空や中部を問題とせず、羽田、成田に集中し、そのうえで、左の図(幻冬社新書「血税空港」2009年、森功著より転載)にあるように、オープンスカイの環境の中で、成田空港を経由せずどんどんアジアへの直行便をアメリカの航空会社が飛ばしているのが現状です(成田パッシング)。
徹底した保護主義と、経済大国の驕りの中で胡坐をかいてきた日本帝国主義、政府が慌てだしたのは至極当然です。これ以上の羽田の拡張や、第3空港などの展望のない今、国の政策として成田空港の整備・拡張に死活をかけようとするのは理の当然でしょう。
この数年の市東さんの農地をめぐる攻防はそういう中での闘いだったのです。そして目前の5・20天神峰現闘本部控訴審判決闘争とは、そうした国家権力の追い詰められているが故の「突破口」をこじ開けようとする攻撃であり、文字通りの新たな決戦情勢の入り口と言えるものとなっているのです。
今、東日本大震災の中で、「国策」(原子力問題であり、農業問題など)が震災と自らの住民支配の破たんとして音を立てて崩れています。嘉手納爆音訴訟が2万2千人もの原告(住民)を擁して4月28日に提訴されましたが、昨年一年間の普天間、名護の闘いを通して築かれてきた「基地撤去」の闘いが「日米合意」の「国策」を破綻させようとしていますし、ヤマトの闘いもそれに向けて踏ん張る状況が生まれています。そして日本の航空政策をめぐる破たんを強制してきた大きな柱が45年にわたる三里塚闘争にあることは明らかです。
5・20天神峰現闘本部控訴審判決闘争とは、こうした局面の中で、一つの節目をこじ開ける闘いと言っても過言ではないと思います。みなさん。結集しましょう。
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