関空・大阪統合法を批判する
昨日、衆議院で関西・大阪(伊丹)両空港の統合法が本会議で可決され、成立しました。一昨年、にぎにぎしく始まった「関西3空港」論議の結末だが、果たしてめでたし、めでたしでしょうか。
一切の根源は関西空港の経営破たんです。関空と同じ滑走路2本のヒースロー空港(イギリス)で、航空機の離発着が48万回(2008年年)なのに対して、4分の1以下の11万回前後(左下グラフ参照。関空会社ホームページより引用)が関空の現状です。国の財政から毎年90億年近くを補てんしてもらいかろうじて黒字を維持しており、しかも1兆3千億円の負債が減らないのです。これへの毎年の利払いだけで200億円を超えています。
統合したからと言って「効率的な運用で関空の経営を改善」できるのでしょうか。2つの会社を1つにするといっても、旧の関空会社を土地保有会社にするのですから、2つに変わりません。今までマスコミで言われてきたのは、大阪空港の利益50億円から80億円で赤字が解消され、世界1高い着陸料を下げられるということでした。実はこれがインチキなのです。
大阪空港の利益は、空港整備特別勘定に毎年繰り入れられていました。ほとんどの空港が赤字の中、同会計にとって貴重な収入源だったと言われます。だったらこれまで国が関空への補給金をこの会計から出していたのですから、同じことではないですか。しかも、これまで税金をごまかすために2期工事を中途で止めていたのを完成させました。大阪空港と一体化させ新しい会社にするために。そのため、固定資産税などで60億円の支出が新たに発生したと言われます。だから、関西財界は国は補給金を150億円にしろと言い出したのです。確か、民主党の「仕分け」で、いったんは「無駄な支出だ」と切り捨てられたのではなかったのでしょうか。なんという人たちでしょうか。
右の表は直近のこの5月の関空の国際線の状態を示したものです。アメリカ本土とヨーロッパが足しても8%しかありません。しかも、JALもANAも飛んでいません。世界の金融の中心と言われるニューヨークとロンドンには、わずかに中国のチャイナエアラインが週に3便(毎日ではない)ニューヨークに飛んでいるだけで、ロンドン便はありません。先ほどあげたヒースロー空港には行っていないのです。そしてアジアとハワイなどで82%もあります。中国、韓国、東南アジアなどとの貿易が急激に増加していますからビジネス客もあることはあるでしょうが、ほとんどが観光客ではないでしょうか。確かに、菅政権は「観光」を成長戦略の目玉とはしていますが・・・。
もし、着陸料を下げる事が出来て、この状態が改善され、ヨーロッパやアメリカへの客が増え、便が増えるのでしょうか。「国際拠点空港として再生、強化」することができるのでしょうか。
観光需要が増え、とくにLCC(格安航空)の流れが強まる中、ハブ空港を必要とする(LCCは必要としません)大手航空会社は、ビジネスクラスとファーストクラスの客層によって利益を上げ、路線を維持しています。関空にこれほどまで欧米の航空会社の便がなく、そもそも日本の航空会社が欧米に一便も飛ばそうとしないのは、ビジネスクラスやファーストクラスの客が関西空港にはいないからなのです。ですから開港当初飛んでいた日本と欧米の航空会社が次々と撤退したのです。この問題は、基本的には日本の極端な一極集中による経済構造に起因しており、関空と大阪空港を統合したところで何も変わりません。空港がガラガラですから、LCCの市場にはなるかもしれません。それとても、日本にはカボタージュ規制があり、外国(アジア)のLCCにとってそれほど魅力のある空港ではありません。少なくとも、LCCを軸にしたアジアのハブ空港にさえ程遠いというのが現状です。
関西空港は「民間活力の活用」と言われ、確かに民間資本も投入されましたが、2兆円を超える国税と地方自治体の税金が投入され続けています。この現状を見る時、関西空港が国策として進められてきた破たんについて何一つ私たち納税者に謝らないばかりか、何の展望もなく統合による延命を続けるという法律として、今回の統合法が、私たち納税者の意見を問うことなく、成立されたと思わざるを得ません。こんな一部の人間たちのパイの奪い合いによって無駄なカネが垂れ流され続けることに私たちは反対です。
しかも、橋下大阪府知事のように「新たなアクセスの建設」と露骨な利権をさらに求める蠢きに怒りを覚えます。その橋下の言動にもあったように、関空は明らかに海上要塞として、有事には軍事転用されることは明らかです。これほど利用価値がないのですから、すぐにもそちらへの転換がおこなわれるだろうと考えざるを得ません。
目先の延命に汲々とした中で生まれたこのような「統合法」に私たちは反対です。直ちに廃止すべきです。
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