上写真は、沖縄・読谷村のチビチリガマの前で、三里塚の萩原さん、市東さんに村人の「強制死(集団自決)」を語る知花昌一さん(09年5月)。
【知花さんの講演の昨日のブログの続き】
これは県議会が、沖縄県の研究所などの資料を集めて作ったものです。今、年間、沖縄県に基地があるゆえに投下されているおカネがあります。これは基地周辺整備資金だとか、あるいは北部振興資金だとかそういうものです。私たち読谷村も100億ぐらいの予算規模です。そこに約10億前後が基地関係の収入として入ります。結構大きい金額ではあります。それで、現在沖縄県に投入されている、1年間での基地関連の補助金や資金が、3,255億円あります。
それを「全部基地をなくせ」と言ってるわけですから、どれくらいの効果が基地をなくしたらあるのかということを調べたのが、年間で9,155億円の生産誘発額があると。今の投入されている金額の2.2倍くらいあります。そして失業率に関しても改善されます。これは今日の誘発者数が、今の2.7倍ぐらいあるということになっています。これは私が恣意的に言っているわけじゃなくって、ちゃんとした県議会の報告書です。報告書は、レジメの10ページから12ページに資料としてつけてあります。ちょっと見てください。これはネットにあるものですので、興味のある方は後でご覧ください。私が書いたものではありません。
12ページにありますが、これで基地が全部返還されると100%で生産誘発額は4兆7千億円あります。雇用者数も48万以上あるだろうということで、一気に最低所得、あるいは失業率の高い県から、基地がなくなると豊かな県になるのじゃないかと思っています。ところが、これが全部実際にできるわけじゃなくって、沖縄の力、基地が返された時にそれを活用する沖縄の力というのが必要です。100%あれば4兆円の効果があるんですが、私たちの力はそれだけはないということで、県が計算したのが力(実現可能性)は19.4%。約20%ぐらいが、沖縄県が基地を全部返された時に活用できる今の時点の力だろういうことです。そういうことも計算しながらやったのが12ページの1番下の「8」のところにある、1年間で生産誘発額は2.2倍、所得誘発額は2.1倍、雇用誘発者数が2.7倍ということであります。
もう県も、県議会もそうですが、多くの方々が、基地がなくても沖縄はやっていけるというような感触を持ってきています。
ところが本土の中の人たちの中には、「基地がなくなると沖縄は大変じゃないか」と、「基地によって経済的に潤っているんじゃないか」と言う人たちがいます。これはまあ、はっきり言って素直な疑問であると思います。でも「違う」ということを僕はこの4、5年前から言ってるんですが、これが明らかになってきてるのです。
「基地がなくなると困るんじゃないか」という理由としては、「軍用地料がたくさん入ってるじゃないか」。これがなくなると、「軍用地料でご飯を食べている人もいるはずだ」し、「高齢の方だったら基地がなくなったら、仕事もできないし大変じゃないか」という、そういう素朴な疑問もあります。もう一つは、米軍家族がいます。「そういう人たちが使うドルがある。それで経済がちょっと潤っているんじゃないか」ということを言われます。もう一つは基地に従業員がいます。9千名ぐらいいますが、その人たちが全部解雇される。その人たちをどうするんだという素朴な疑問があります。(左写真は、昨年の4・25県民大会後の金城実さんのアトリエでの交流会で挨拶される知花さん。中央に三里塚の萩原さん、市東さん(後姿)、左に見上げる山本さんがおられます。)
でも、そういう疑問は、沖縄の中ではだいたいが説明できるようになっています。これがレジメの8ページの黒い●印で書いてあります。
軍用地主は、まあ、私も軍用地主だったんですが、「象の檻」が返されたものですから今は軍用地主ではありません。でも、軍用地主は3万8千名ほど沖縄にはいます。土地を盗られた地主ですね。それが、軍用地主料が783億円。毎年ほぼそのくらいの金額が入ります。これはアメリカから入るんじゃなくって、みなさんの、私たちの税金から払います。全部、日本政府が払うんですね。でも、返還されたところが結構あって、軍用地料が入らないんです。
私の「象の檻」も返還されて軍用地料が入らなくなりました。「象の檻」全体で3億6千万の軍用地料が入っていたんですが、入らなくなりました。じゃあ、入らなくなったら生活に困るかいうことです。私は事業をしていて、生活相談なんかを受けたりもするんですが、「象の檻」は私たち読谷村の波平という部落の人たちが持っている土地です。それに対して「軍用地料がなくなったから生活に困った」「大変じゃないか」と相談に来たのは1軒もありません。10年前に返還闘争した時には、酒を飲みながら僕に文句を言う人もいました。「あんたが返還運動して、基地が返されると、軍用地料、入らなくなるじゃないか。どうなんだ」と言われたことがあります。今、私は「象の檻」返還地主会の会長です。僕に文句を言った人たちも含めて、今、跡地利用の計画をしています。1人も僕に相談をしてきた人はありません。
そういった意味では全体的にそうです。基地がなくなっても、軍用地料は入らないけれども、その跡地利用をやるということに積極的になっています。
そして米軍の家族の消費がなくなるじゃないか。ドルを使わなくなるから、よけい沖縄の所得はダメになるんじゃないかということがありますが、確かに米軍人関係でですね、約4万5千名くらい沖縄にいるんです。その米軍が使う直轄事業、あるいは家庭消費、それぞれの金額がありますが、合わせて約400億円ぐらいが年間落ちるわけです。以前は大変な状況でした。1972年の時点では、基地がなくなると沖縄の経済はダメになると言われてもしょうがないくらい基地に依存度が17%から20%くらいあったと言われています。ところが今は、その400億というのが沖縄に落とされるわけですが、沖縄経済全体の比率からすると4%から5%くらいです。確かに基地がなくなると4%くらいダウンするかもしれない。でもそのくらいは、十分我慢できるし、乗り越えられるという風に思っています。
なんでそうなっているかということですが、17%から20%から4%の依存度になぜなっているかというと、ドルが安くなった。昨日のを見ると今、83円くらいですね。ドルが安くなったということと、もう一つは観光が非常に盛んになったということがあります。1972年当時は、本土から44万人くらいの人たちが沖縄に観光に来ていたと言われています。その人たちが使うおカネが、324億円くらいですね。今じゃあどうなっているかというと、今、600万人ぐらいが年間来ます。ドルが安くなったということで、海外に行く人が増えたりしてちょっと落ち込んではいますが、それでも600万人くらい年間沖縄に来るわけです。そしてその収入が4100億円くらいが入ります。もうアメリカが落とす400億をはるかに超える観光の収入があります。みなさんが沖縄に来るときは恐らく10万円くらい持ってくるでしょう。だいたい平均7万円くらい。全部落ちるわけじゃなくって、飛行機運賃とか本土のリゾートホテルにも泊まるし、そこから本土にも行くんですが、いずれにしろ4100億円が沖縄に落ちているということになります。そういった意味では、もう基地に頼らない経済構造が、ちょっと弱い第3種産業ではあるんですが、それがあるということです。
従業員に関してです。「基地がなくなると9千名が失業する、大変じゃないか」。確かに大変です。でも、これはクリアーできると思っています。なぜクリアーできるかというと、沖縄の基地は、沖縄が持って来いと言ったことは一度もありません。日本が戦争をしでかして、そしてサンフランシスコ条約でアメリカに売り渡し、そして返還の中で基地をそのまま維持していく、安保体制に組み入れていった。こういった点からすると、沖縄に基地があるのは日本の政策によって、日本政府によってなされたことである。それに対しては日本は責任を持ってやるべきだと思いっています。そして今、それは十分できると思います。なぜかというと、米軍駐留経費、アメリカ軍がいるということで、我々の税金から出されている金額が7146億円あります。すごい金額です。その中で「おもいやり予算」が約1900億円ぐらいあります。これは、2~3年前には2600億円ありました。ちょっと減っています。それでも今もって1900億円が毎年、アメリカ軍のために「おもいやり予算」だけでも出しています。「おもいやり予算」というのはどういう風に使われるかと言ったら、アメリカ人が住む電気料、水道料、そして基地従業員の給料、軍用地料、そういったものを全部、日本政府がアメリカに肩代わりして出しているんですね。
そういったものがまだ居座っている。基地がなくなるとこれがなくなります。その時、駐留米軍経費7千億円、あるいは「おもいやり予算」約2千億円がいらなくなるわけです。これを9千名の解雇される人たちの再就職に向ければ、十分にその人たちが仕事に就けれていける、私はそういう風に思っています。それはまたやるべきだということで、基地が無くても沖縄はちゃんとやっていけるよということを、私たちはただ個人的に基地反対をしている僕の言葉じゃなくて、県議会の報告含めてですね、沖縄県全体で共有するような状況に、今、だんだんだんだんなってきています。
そういった意味で、今、新しい時代に行けるかなという希望を持ちながらやってるわけです。
レジメのその部分の下に参考として置いているんですが、これまでのなんでこういえるかと言ったら、返還された土地の活用がなされてきているわけです。ハンビー飛行場、北谷(ちゃたん)町のハンビー飛行場というのがあったんですが、そこに小さい飛行場があったんですが、今は返還されてそこにアメリカンビレッジとか美浜とかいうショッピング街ができています(雇用が100人から2259人、税収357万円から1億850万円へなど)。そして那覇の新都心、これも米軍住宅地だったんですが、今はもうすごい街になっています。そういったものを含めて、返還された土地が、意外と沖縄の人たちの知恵というか、相当時間がかかったんですが、実績が上がってきている。そういった前例があるものですから、もうやっていけるという状況になっています。(右上写真が、那覇の新都心の中心部。昨年の知事選挙最終日 10年11月27日に)
(一部省略)
沖縄を取り巻く状況
沖縄を取り巻く状況ということで、少し僕の想いを述べていきたいと思うんですが、知事選にはみなさんからも多くの支援を受けたんですが、伊波さんは負けました。僕らは、基地問題を焦点にできたら絶対勝つという風に思ってたわけです。仲井真は、辺野古の海を埋め立てて基地をつくるのを賛成していました。それをずっとやってきたわけです。伊波さんは、絶対に作らないということを言明して選挙運動に臨んだんです。ところが、そこにもあるように県民の86%が辺野古の基地に反対という中で、辺野古(新基地建設)を容認すると勝てないと彼らは見て、そして那覇市長の翁長さんが、基地反対をちゃんと入れろ、入れたら自分は選挙の参謀長になるという条件を付けて、仲井真はそれをのまざるを得ないという状況になっていました。そしてマニュフェストにも「基地の県内移設に反対する」ということを謳ったんですね。
そういったことで基地問題を焦点化することが十分、私たちの運動の中でできなかったということが一つあります。そういうことも含めてですね、負けたということがあります。彼らが戦略的に、政治的にもうまかったと言えば、そういうことになるでしょう。だけど彼らもマニュフェストに入れたということで、それを一定守らなくちゃあいけない状況に今あります。だから、今のところつっぱてるんですね。それを崩そうとして、先ほど言ったんですが、総理大臣を始めとして大臣が沖縄詣でをしている。非常に多くの人たちが来ています。外務大臣の前原も来ましたし、防衛大臣などいろんな人たちが来ています。仲井真知事を納得させようということです。(左写真は、知事選挙で、那覇の国際通りで、伊波候補と稲嶺名護市長。10年11月26日)
そういうことであるんですが、名護市の稲嶺市長さんが相当つっぱてるもんですから、県にはくるけれど、名護には一切来ません。1回も来てないんですよ、誰も。しかも、先ほど言いましたように再編交付金19億円をストップされているんです。それに対して、「止めるんだったら、頭を下げてはもらいにいかない」ということで、ここに書いてあるんですが、新年のあいさつにですね、名護市長は「再編交付金は労せずして入る金、自ら汗して稼いだお金で街づくりをする」ということを宣言しました。
沖縄では、まあ今まで名護市もそうだったんですが、カネがぶら下がるとそれに飛びついていく、まあ、これは沖縄だけでなくて、神戸もそうかもしれませんが、だいたいそういう形でこれまでなされているわけです。そういう中で名護市の稲嶺市長は、ここまで言ったんです。そして沖縄では、先ほど言ったんですが「ふるさと納税制度」というのがあって、神戸からも名護市に税金を納入できるという、こういう制度があります。全額ではないのですが。そういう制度を使っていこうということで、結構入ってきています。まあ、10億、9億まではいかんと思いますが、でもそういう名護市を勇気づけるという意味でも、やろうと言っています。
これは前例がありまして、米軍政下のもとで人民党、今の共産党ですが人民党の瀬長亀次郎さんという人が那覇市長に当選するんです。ところが米軍が金を全部止めるんです。まず琉球銀行というのがアメリカ傀儡だったもんですから那覇市に金を出さない、貯金を含めて全部凍結するんですね。そしたら那覇市は困るんです。そしたら那覇市民が率先して納税しようということで、那覇市に列を作って税金をもってきたという運動があります。そういうことが前例としてあったものですから、瀬長亀次郎さんの娘さんたちが新聞で呼びかけをしながら、そして今、あちこちから名護市に資金を、寄付含めてやろうという動きが出てきています。それが非常に勇気づけられる状態になっています。
これまでほんとに「カネ、カネ、カネ」ということだったんですが、1歩ぬけてですね、自力でやっていこうというのが名護市で成功すれば、どんどんそれが広がっていくんじゃないかと思っています。ちょうど岩国で負けてしまったものですから、大変だなという思いがするんですが、でも岩国で負けたものを沖縄で取り返そうとやっています。 (つづく)
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