10・10三里塚へ 市東さんの農地を守ろう
三里塚において、この1年近く、民主党政権の成立とともに市東さんの農地(上写真)をめぐる、言い換えれば成田空港の誘導路の「へ」の字部分をめぐる熾烈な戦いが繰り広げられてきました。
マスコミに大きく報じられた(右新聞)ように、この5年間で農業人口が22%も減少し、農業従事者の平均年齢が65.8歳まで上がるという形で、国の農業切り捨てが顕わになっています(左図)。 三里塚における空港のために市東さんの農地を奪おう、営農を破壊しようとという国の動きは、こうした流れの中で起こっています。
親子3代で90年にわたって耕し続けられ、無農薬・有機栽培で20年以上にわたって営農が続けられている肥沃な農地、第1級の優良農地を空港のために取り上げコンクリートで固めようなどということが、戦後農地法の精神からも許されるはずがありません。しかも、市東孝雄さんは、「1億8千万円の補償よりも、1本100円の安全な、美味しい大根を作って消費者、労働者に喜んでほしい」と、厳しい中で年間50品目を超える作物を作っておられます。この市東さんをただただ空港のために追い出そうと、営農破壊を企むことなど到底許されません。国策に名を借りた国家権力による生存権、生活権、人権の侵害、強奪でしかありません。
空港から入る膨大な税金で潤ってきた成田市は、こうした国の意志と自らの利権を守るために、市東さんの営農を破壊することを唯一の理由に、3月16日、成田市議会で市東さんの家の前の道路、団結街道の市道の廃止を決議しました。そして成田空港会社NAAは成田市から「買収した」として6月28日、夜陰に乗じてこの団結街道を閉鎖しました(右写真。市東さんのお宅は、写真手前左側に。最初の写真の畑は写真上部の天神峰現闘本部と印された向こう側にあります)。
江戸時代に記録が残り、市東さんが日に5回も6回も営農のために使うことはもちろん、今も一日に150台以上が通行して付近の住民が使っていた道路を、道路法に基づいたこうした関係者の同意もなく道路を廃止にすることなどできません。一方的な道路の廃止は地域住民の生活圏を破壊する違法行為です。そもそも市道だから成田市の所有だというのは、法的に管理を付託されたもの以上ではないのです。
閉鎖した根拠は「第3誘導路の建設のため」ですが、成田空港周辺の類似した誘導路や滑走路と交差する道路は、すべて地下道化されて維持されてきました。にもかかわらず、この道路のみ廃道化し、閉鎖するという暴挙に、ただただ市東さんの営農を破壊するためという意図が明らかになっています。
3月28日、成田空港会社は暫定滑走路が2500メートルに延伸されたことをもって、成田空港の離着陸の枠を20万回から22万回に増加させるとともに、A滑走路を離陸専用、暫定滑走路を着陸専用にしました(周辺住民の騒音被害による抗議で、一部緩和されたようです)。このため、暫定滑走路に着陸する航空機の数は一気に以前より数倍化されたのです。しかも、使えないと言われていたはずの、ジャンボ機も。
冬場を中心に北風が年間の6割以上を占めるため、滑走路から300メートル余りしか離れていない島村さん宅は左写真にあるように上空40メートルを110ホーン以上の轟音を響かせながら、1分~2分間隔で襲い掛かるという事態になっています。写真手前が島村さんの畑ですが、家に居ても、畑に居てもこの轟音に襲われるのですから、その肉体的、精神的な苦痛と被害は筆舌に尽くしがたい深刻なものとなっています。
島村さんのお宅の奥、東側に清水の畑(10・10全国集会の会場、右下写真)をもつ萩原進さんは、「9・19三里塚と沖縄を結ぶ関西集会」で、この現実を以下のように語っておられます。
「自分の畑がその(島村さんのところ)すぐ脇にありますけれども、2分おきに飛行機が脇を通るんですね。東京の山手線のガードと同じなんですよ。飛行機が。その下で農作業をしている人というのは、実際を言えばこれは耐えられないんですよ。次々に来るんですから。この間の台風の時の飛行機の状態と言ったら、こういう風に揺れて(両手を広げてバタバタする仕草をされる)降りてくるんですからね。降りられずにもう一度上がっていくような状況。その下で仕事をやっていて怖くてしょうがないわけですよ」と。
今、世界、アジアの中で、航空政策において決定的な立ち遅れに追い詰められた政府、民主党政権は、「羽田ハブ化」「羽田・成田の一体運用」「成田のLCC・貨物専用化によるハブ化」に大きく舵を切って進もうとしています。そのためには、東峰地区住民の叩き出し、天神峰からの市東さんの叩き出しで、「へ」の字誘導路問題の解消と滑走路の3500メートル化によって事態を前に進めたいと必死になっています。ですから、5月24日開かれた第3誘導路のための公聴会(国交省主催)で示された環境アセスメントで、なんと、市東さんも東峰地区住民も存在しないことを前提としたアセスメント調査の結果を公表したのです。もちろんこういう時のアセスメントがどれほどいい加減なものかは衆目の一致するところでしょうが、現に住み、営農している人々が存在しないことを前提としたアセスメントとは、いったい何なんでしょうか。そこには国交省、国、NAAの「住民を叩き出す」という意思表示しか汲み取ることはできません。
9月6日、成田市議会の空港特別対策委員会でとんでもない「緩和工事」の計画が、NAA(成田空港会社)の説明で露見しました。以下、8日付け反対同盟のビラを引用します。
「問題になっているのは、暫定滑走路の『へ』の字誘導路。無理に無理を重ねたために、本来、滑走路と平行であるべき誘導路が、大きく『へ』の字に曲がっています。
滑走路と誘導路の間隔(離隔距離)は接触事故を避けるための国際標準が決まっています。182.5メートル。ところが『へ』の字部分は、一番近いところで107メートルしかありません。
このためNAAはなんと信号機を設置し、滑走路を走る航空機があるときには、誘導路を走行する航空機を待機させてむりやり運航してきたのです(右下写真)。
『緩和工事』とは、その曲がり具合を緩くする工事のこと。NAAの説明では、工事後の離隔距離は120メートル。13メートル広がるだけです。ところがNAAはこれで改善できたと言って、信号機をはずしてノンストップで運行するというのです。どうしてこんなデタラメが許される? 乗客、乗員、住民の命には目もくれず、利益のためなら法も破って平気なのです。(左写真は反対同盟ビラより転載)」
成田空港を、羽田・成田一体運用のハブ化のために30万回の飛行を可能にするうえで、決定的な障壁が「へ」の字誘導路問題、市東さんの存在とその営農であり、東峰地区住民とその営農です。安全性を無視し、法も無視したこの「ノンストップ」運行は、22万回化から27万回化、そして30万回化への「市東さんが動かない」ということに追い詰められたが故の突出であると同時に、そのことによる極限的な騒音地獄などによる市東さんと東峰地区住民の叩き出し、そして3500メートル滑走路の実現に目的があることは明らかです。国策の名の下で進められるこれほど非道な、暴虐な攻撃がどうして許せるでしょうか、それは、沖縄の基地建設攻撃に通じる問題です。(右上写真では、ジャンボが使われていることと、天神峰現闘本部の左手に4機も、航空機が信号で止められ渋滞していることがわかります。今年6月9日撮影。クリックすれば大きくなります。)
航空政策の完全な立ち遅れを取り戻そうとする民主党政権、航空資本によるこの卑劣極まる攻撃を許さないために、この「国策」に真っ向から身体を張って、実力決起で闘いぬいておられる市東さんをはじめとした反対同盟の皆さんとともに、そして沖縄の基地撤去の闘いをともに闘うたたかいとして、10・10三里塚現地全国集会の決定的な位置があるのです。
なお、ここで、成田空港にとって「30万回」はありえないと決めつけるのではなく(アジアの新自由主義政策が闊歩する航空業界の現状と日本の資本家階級の生き残りをかけた必死さを見なければなりません)、「30万回」を目標とすることで、羽田・成田一体運用、成田ハブ化を羽田ハブ化とともに進めようとする国策を許すのかどうか、そのために民主党政権が今三里塚で、市東さんに対して、三里塚闘争に対してどう襲いかかろうとしているかを見据えきれるかどうかが、我々に決定的に問われているのだということを申し添えておきたいと思います。
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コメント
市東さん、石井さん、鈴木さん……そして、おらたちも含めて、みんなの“命”を守り、“生命のすごさ”“ふしぎさ”“か弱さ”をひとりひとりの“命”で守り抜こうぜ。
闘うのさ。
物理的な数で、まあ、どっちにしてもやがて実力行使だね。
投稿: ルンペン放浪記 | 2010年10月 7日 (木) 20時13分