三里塚と沖縄を結ぶ③ 安次富浩さん(その2)
沖縄・辺野古と安保体制(その2) 安次富浩さん
私たちの闘い、沖縄の闘いというのは、正に日本政府、官僚どもが、あるいは自公政権もそうだったんですが、日本の安全と平和のために沖縄は我慢してくださいと、そして、だから振興策など沖縄にお金を出してんじゃないかというのが前政権です。鳩山政権はそれを変えると、変革すると言ったわけでしょ。「沖縄に来て、最低でも県外移設、国外移設だ」。そういうことを選挙公約にして、沖縄で応援演説した。その結果として去年の8月の衆議院選挙では、沖縄の自民党議員は全滅したわけです。比例区にも沖縄出身の自民党議員はいない。こういう実態を生んだにもかかわらず、この一年間の鳩山、そして菅にいたる民主党政権のやっていることは、前政権となんら変わらない。沖縄を差別していく構造はまったく変わらない。
誰かが政治主導と言いましたけれど、こと防衛・外交問題については政治主導ではなく、まさに防衛官僚たちの、あるいは外務官僚を含めての政治を超えた動きが強い。北沢、また防衛大臣になりましたが、北沢などはほんとに防衛官僚の操り人形としてこの間動いてきたと思います。
そういう日本の構図の中で私たちが闘っているのは、まさに平和的生存権の確立です。その裏返しは、先ほど言ったように沖縄を差別構造として出してくる、それは何かというと軍事基地との「共存、共生」というのが日本の政治家、あるいは官僚たちによる押しつけじゃないかと思います。この軍事基地との「共存、共生」と対決していく。それが一つとして、憲法で保障されている、なんで沖縄だけに平和的生存権が確立できないのかということです。
だから、沖縄の反基地運動というのは正に、全国の0.6%という県土、面積が少ないところに74%の米軍の施設が集中する。沖縄本島だけにおいても、自衛隊と米軍基地のみで、面積を比較すると20%が軍事基地です。こういう歪な構造を、私たちが復帰後もずっと闘い続けている、その中での焦点がまさに辺野古の闘いだと思います。
今、私たち、沖縄の県民は、たとえば新聞記事を持ってきていますが、琉球新報と毎日新聞の、これもみなさん見ていると思いますが、世論調査では84%が辺野古移設反対です。政党だって、みなさん、社大、共産、社民は当然ですが、下地が属する国民新党の沖縄のグループも反対です。下地自身は本音は陸上案ですけど。それに騙されてはいけないということがありますが。それと自民党も公明党もその沖縄県連は県内移設反対なんです。もう県外に持って行けという状況。
ただ、沖縄では、選挙の時に唯一、日米安保条約堅持、辺野古新基地建設支持というのがでてきてます。それは誰たちかというと、あの幸福の科学のオカルト集団の政党である幸福実現党という、「真の保守」というようなスローガンでやってますが、こういう連中だけなんですよ。逆に言うと、鳩山も、あるいは菅も幸福の科学と同じで、もしかしたら信者かもしれませんね(場内爆笑)。そういう情けない政治を沖縄に押しつけているということだと。
だから、私たちはこの現実をまさに突破できるという自信をもってます。4月25日、9万人余の県民が集まった読谷村での県民大会。萩原さんも参加されたのですが、その日にはちゃんとお会いできなくて申し訳ありませんでした。あの集会と、それから5・16の、記録的な豪雨といわれたその中で普天間基地を包囲した1万7千人。包囲した沖縄の怒りは、鎮静することなく脈々と動いているわけです。それが一つの形として名護市議選に現れたという風に見てください。
しかも、8月31日には、日米の事務方の協議の報告書が出ました。恐らく政府も、それから仲井真知事も、名護市議選は勝つと思っていたと思うんです。仲井真知事は、「稲嶺市長が反対だから辺野古に作るのは難しいですね」と言って他人行儀な言い方をずっと続けていますが、その彼が名護市議選で何をやったかと言ったら、基地移設誘致派と一緒になって写真を撮ったり、選挙戦で動いたわけです。本音は何か。彼は、今きれいごとを言っているけれども、いずれ誘致に鞍替えするということは明々白々です。だから彼に打撃を与えたわけです。それに政府にも。仲井真知事は、この名護市議選が終わった後の記者の質問に対してしどろもどろでした。「俺に聞くな。政府に聞け」と。まあ、それが彼の本音でしょう。
8月31日の事務方の報告書の中でまさにでたらめな内容がまたも充満しているということが判明したわけです。私は、アセス違法糾弾訴訟の原告団長をやっています。第6回公判がありまして、その時に新たに意見陳述をやりまして、「いい加減に日本政府は、我々沖縄県民に答えろ」と。裁判で答弁書も出さないんですから。入り口論議ばっかりやってるわけ。それを糾弾しましたけれども。その報告書の内容たるや、みなさん、ほんとに国の政治家の言葉というのは重みがないんです。
鳩山前首相は、あの退任間際になんと言いました。「埋め立ては自然への冒涜」と言ったんです。それで、埋め立てじゃなくて杭打ち桟橋という方式を彼は提案したわけです。日米の事務方は「埋め立てだ」と。「自然への冒涜」と言った首相のことばを、勝手に無視してるわけです。まあ、もっとも鳩山さんも、「最低でも県外移設」と言って辺野古回帰をしているわけだから、彼自身の政治家としてのことばの重みなんてのはなかったのかもしれませんが、「県外移設」へ努力もしなかったからかもしれませんが。
とにかく、今回の報告書の中で第1点は、埋め立てです。第2点は、I字、V字型という2論の計画案併記です。当初、米軍再編合意の時にはV字じゃなくて、L字型だったんですよ。1本の滑走路だったわけです。それに対して地元の誘致派、負けた前市長は沖合に出せ、元の所に持って行けということで、政府とけんかをやっていたわけです。それに対して、当時の額賀防衛庁長官が提案したのがV字型滑走路案だったんです。離陸用、着陸用にすると。だから民家の上空は飛ばないんだということで、アメリカとのL字型の合意を、アメリカ側に覆させたわけです。
ところが、これがV字型になったらアメリカ軍は喜んでるんです。今でも言ってます。V字型で、離陸、風の具合で1本は離陸、着陸という風に分けて飛びます、そんなことは言わない。2本とも離陸したり、着陸すると。アメリカにとって、軍事訓練ということからそれが当然じゃないですか。こういうことではアメリカは本音をちゃんと出すんだけれども、西山問題と同じように、あるいはこの間の核問題と同じように、日本政府、防衛官僚というのは国民をだます、沖縄県民をだますことに長けているというか、長けているんじゃなくって、いずればれる嘘をつかざるを得ないこの情けなさを感じます。
それで、V字型と今度はI字型にしたわけです。I字型でも米軍の了解を得るように、訓練の内容によっては民家の上空を飛びます、計器飛行とかそういうんだったら民家の上空を飛ばします。しかし、V字型、I字型の次に問題になったのは、飛行経路なんです。アメリカ軍は、着陸、離陸で台形などで飛ぶわけはないと言ってるんです。楕円形で飛ぶんだと。楕円形で飛ぶと、カヌチャベイというホテルがあるわけです。その周辺、安部部落の周辺、集落があるところ、そこに騒音がかかるわけです。それをだまし続けて台形と言った。今頃になってアメリカと日本政府、外務・防衛は、台形にするか楕円形にするか、知事選後に決着するというような言い方です。本当に沖縄県民をだます、こういうことばっかりやってきているわけです。だました割には政府案で決着できないわけですから。
さらに今回、大きな問題になったのは自衛隊のヘリコプター部隊の常駐というのを防衛省がアメリカに提案しています。アメリカは今のところ「ノー」と言ってます。で、飛行経路に続くんですが、岡田が、今度幹事長になっていますが、岡田外相の時にMV22オスプレイ(左写真)の配備はもう公然としないといけないと記者会見で言い始めています。今まで政府は、私たちがアメリカにおけるジュゴン裁判でその問題を出してきて、国会で山内、照屋さん、あるいは糸数さんとか赤嶺さんとか、野党の国会議員にお願いしてこの問題を追及した時、アメリカ政府からその配備なんというのは聞いていないし、そういうことはありえないと言った。一方でアメリカの会計年度報告では、2012年10月に配備が始まって、CH46ヘリは24機2個中隊全部をMV22オスプレイに代えると。辺野古の基地を作る前に普天間で配備が始まり、それがCH46からオスプレイに替わるということがアメリカの会計年度報告の配備計画ではっきりしているのに、日本政府、防衛省はそれをごまかし続けてきた。そのことがもうごまかしがきかなくなって、軟着陸を図ろうということで岡田が言い始めたわけです。
このMV22オスプレイというのは、確か24名乗りだったかな、中型の輸送ヘリなんですよ。離陸するときにプロペラがヘリみたいになって(右上写真の状態)、上空になったらこのプロペラのアームが前に来てジェット輸送機になるわけですね。垂直離着陸というやつです。ところがこれは試作段階で何度もヘリ墜落事故を起こして30数名の米兵が亡くなっている。アメリカのほうでは、このMV22オスプレイを「未亡人製造機」というふうに揶揄されているという報道もありました。沖縄のQAB、琉球朝日放送などは報道しましたけれど、あるいはテレビ朝日でも報道されたと思いますが、今年の4月に、アフガニスタンでこのヘリ、MV22が墜落事故を起こしています。4人の米兵が亡くなった。イラクでも事故を起こしていますね。
今年5月には、アメリカの航空ショーで、このヘリのデモンストレーションで10数名がMV22オスプレイの突風で怪我をしたということが報道されています。離陸、着陸するときに突風がでるわけですね。一番不安定なのはその時だというんです。プロペラで離陸、着陸するときに不安定だと。日本政府の、前政権の防衛省のお抱え学者、森本敏というのがいますよね。彼は今年の1月の「朝まで生」という衛星放送の中で、自慢げにこの話をしてました。「まだまだ不安定だから、なぜ海岸端に作るかわかりますか。海に落ちればいいんです」。恐ろしい話じゃないですか。海に落ちて、「まあ米兵に対して失礼だけれど」という言い方ですよ森本は。冗談じゃない。海に落ちれば海の生物に影響を与える。漁民に対しても影響を与える。
そんなものを配備するという、そのことに対して黙認していくという日本の外交・防衛政策に従属性というんですね、これが顕著なんです。私たちは、このことをこれからも追及していく。 (続く)
| 固定リンク
「たたかいの報告」カテゴリの記事
- 市東さんの所での座り込みに参加して(2023.01.21)
- 市東さんの農地を守ろう! 現地決戦に参加して(2022.12.15)
- 11・28 耕作権裁判傍聴報告 証拠隠し許さず 審理を尽くせ(2022.12.05)
- 強制執行許すまじ ー 11・27三里塚報告(2022.12.03)
- 4・25耕作権裁判報告 空港会社の証拠・証人隠しを追求(2022.04.29)
コメント
安治富さんの報告ありがとうございます(まだ続くようですが)
民主党は正々堂々と「普天間の辺野古移設」を掲げて知事選を闘えばいいのに(不「幸福実現党」も協力してくれますよ)、卑怯な連中です。
不「幸福実現党」の「賛成!!辺野古移設」ポスターを掲載した拙ブログURLを貼り付けておきます。
http://tatakauarumi.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-8e3c.html
投稿: GO@あるみさん | 2010年9月24日 (金) 22時27分