「普天間移設」への国民新党、社民党の動き
3月9日付けの琉球新報に「米軍普天間飛行場の移設先を協議する沖縄基地問題検討委員会で、社民、国民新の両党がそれぞれ移設候補地案を提示した」と具体的内容を含めた報道がされています。私たちは、こうした鳩山連立政権の「初めに移設ありき」の動きに憤りを感じます。
すでに昨日の当ブログに「普天間基地は即時閉鎖すべき」と論じたように、世界一危険な基地と言われる宜野湾の普天間基地周辺の市民への生活破壊、生存権の破壊は我慢の限界を超えています。直ちに閉鎖すべきです。その一方で「移設論議」の根拠となっている「日米安保」「米軍再編」の問題は切り離すべきことなのです。重ねて言いますが「普天間基地一つがなくなっても、アメリカは困らないし、米軍の世界戦略は微動だにしない」のですから。
両案が「在沖米海兵隊は15年後にグアムなどへ国外退去する。2案はそのための暫定措置」としていると言いますが、こうした先送り、すりかえでは「米軍再編」「日米安保」はピクリとも動かないことを沖縄の皆さんは、60年にわたる米軍による占拠を通して痛いほど感じておられます。ですから、「直ちに普天間基地を閉鎖・撤去せよ」「県内移設反対」と言われるのです。このことに真正面から向き合わずに小手先の「論」を立てて誤魔化すことなど許されません。(上の2枚の図表は、いずれも琉球新報より転載。)
今朝の朝日新聞に「密約と安保」という連載記事で「核寄港 踏み込まぬ日米」と題する記事がありました。ニュージーランドが80年代半ばに核搭載艦の寄港を拒み、アメリカが安全保障義務を打ち切ったことを紹介した上で、「大きな安全保障上の懸念がなかったニュージーランドに対し、日本は軍拡路線を取る中国や核開発を進める北朝鮮などに向き合う。米国の核の傘への依存度は全く異なる」と断じています。ここに、この「移設論議」に通じる大きなすりかえ、キャンペーンがあることを指摘せざるを得ません。
日米安保体制は、良し悪しは別にして、米ソの冷戦構造を背景にして生まれ、1960年の安保改定から50年を迎える今日、その大前提となった冷戦構造はとっくに消滅しています。アメリカの世界戦略への批判は置くとしても、私たちの国は憲法9条をもち、戦争放棄の原則を打ち立てています。しかし、「国防」の名のもとに世界有数の自衛隊戦力(軍事力)をもち、冷戦構造を前提とした「日米安保」を持っていることについて、もう一度国民を上げた論議をするべきではないでしょうか。少なくとも、現在進められている日米安保体制の実態が国会論議もないままの「2+2」などという閣僚の間の論議で確立され、「軍事機密」の名のもとに一切が明らかにされてきていないことに問題があるのではないでしょうか。今日、一部とはいえ「核密約」が存在したことが明らかになり、自民党政権60年に対して国民的怒りが表明されていることは、何よりもこうした問題があることを示しているのではないでしょうか。
それを朝日新聞が言うような「ニュージーランドと違うのだ」と無前提に論議の根拠に「国を守ってもらう」といったことを据えることは大きな間違いではないでしょうか。そもそも、「移設」論議の対象となっている在沖米軍は、ほとんどが海兵隊です。海兵隊は、「守る」軍隊ではなく、「攻める」軍隊だともよく言われます。実際にも1年おきにアメリカ本土から移動してきて、沖縄に居る間もアジア各国に「訓練」と称して移動しているために、沖縄に居座ることがないことは周知の事実です。その上、海兵隊が移動するための強襲揚陸艦部隊は、サンゴ礁に囲まれた沖縄にはいい港がないために、遠く離れた長崎の佐世保港に駐留しています。これ自体が軍事的合理性に欠けると、米軍関係者も認めています。では、なぜ沖縄に海兵隊がいるのでしょうか。日米安保条約の「地位協定」があり、膨大なお金(毎年2千数百億円)が日本から拠出され、自由、勝手気ままに使える、アメリカ軍にとってこんな美味しい、居心地のいい基地は世界にないからなのです。日本を守るためなどではないのです。
「日米安保」を国民的論議に問うこともなく、「日米同盟の深化」を国是の軸に据えようとすることに大きな間違いがあります。普天間基地が「世界一危険な基地」であり、周辺住民の「平和的生存権」(憲法前文)と人権が侵されているのですから、日本が主権国家であるのなら、アメリカと対等な「パートナー」だというのなら、先ず「直ちの普天間基地の閉鎖」それ自体をアメリカに要求することではないでしょうか。それをごまかし、「日米同盟」を前提に論議しているという根本的過ちが「移設論議」にはあるのです。
社民党の「グアム移設」論は、淡路島ぐらいしかない小さな島国のもともと住んでいた住民に、沖縄の現実をそのまま押し付けることであり、かってミクロネシアの島々を占領し、支配した日本帝国主義の過ちを開き直ることにつながる犯罪的な論議でしかありません。
また両党による岩国や関西空港などへの訓練などの「移設」論も、戦争体験への痛苦な反省と戦後の米軍占領下での体験、そして平和への願いから「厚木基地の空母艦載機部隊の移駐」に強く反対している岩国市民の想いや、軍事空港反対を掲げて闘い抜いてきた関西の住民の想いを踏みにじる暴論です。
私たちにとって、「日米安保改定50年」を迎えた今こそ、「安保」「米軍再編」を論議の俎上にあげ、沖縄を始め米軍基地の全面的撤去を含む論議をおこすことこそ必要ではないでしょうか。その大前提として、普天間基地の即時閉鎖を行うことが必要です。そういうことが可能となり、実現してこそ、平和なアジアやアメリカ、そして世界の人々との友好関係が真に生まれてくるのではないでしょうか。
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