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2010年1月 2日 (土)

関西空港問題

091210  昨年秋以来「関西3空港」論議がにぎにぎしく行われてきました(左表は、神戸新聞2009.12.10より転載)。

 年末開かれた大阪府、兵庫県、大阪市、神戸市、関西財界で構成する「関西3空港懇談会」は、3空港の一元管理を関西空港会社が行うことで合意したというのが大きく報じられました。もちろん、各空港の負債や経営問題は棚上げされたまま。橋下大阪府知事の「大阪空港廃港論」を内に抱えながらの、この急転直下の合意は、新聞各紙が報じるように、関西空港の補給金が例の「事業仕分け」で全面カットされるかもしれないという危機感からでした。結果として、75億円という国交省の目論見の半分以下で落ち着きそうで、この合意がどうなるのか定かではありません。

 ただ、ここで誤魔化されてはならないのは、この「3空港懇談会」というのは、もともと関西空港の民活の下での地元負担をしている主要な関係団体の集まりということなのです。ですから、大阪空港の関連自治体である伊丹市も豊中市も池田市も入っておらず、この議論に必ずしも歩調を合わせていません。そして、その大阪空港は、唯一、3空港の中で40億円の黒字を出し、全国の空港の中でも空港整備向けの特別会計の稼ぎ頭なのです。ですから、ここの論議は「関西空港の破たんをどうするか」「負担をこれ以上押しつけられたらかなわない」という利害で一致して、補給金問題であわてて合意が図られただけなのです。

 この話しを「3空港」論議に偽装するために神戸空港を加えて論議している形をとっているのだと言っても過言ではないでしょう。もちろん完全に破綻を始めている神戸空港、神戸市にとっては渡りに船で、「神戸を含む3空港同時に一元管理を実現すべき」と矢田市長が飛びついたのです。しかし、上の表でご覧いただければ判るように、神戸空港の利用客はわずか全体の8%足らずで、関西空港の落ち込み幅より小さいのです。ですから、前原国交相は「現時点では伊丹は利用度の高い空港。廃港は考えていない」とした上で「将来的には、3空港から神戸を除外して考えたい」とにべもなく明らかにしているのです。国とすれば当然でしょう。

 関西空港には1兆1千億円の有利子負債があります。これも間違えてはならないのは、現在ほぼ完成に近づいていると言われる二期島(現在までで8400億円が投じられている)は上下分離方式で関西空港会社にこれ以上の負担をかけられないということで、別会社が立てられてそこが抱えているのです。なぜこのようなことができるのか、素人の私にはわかりにくいのですが、そうなのです。ですから関西空港会社は、1994年開港してから16年かかってなお、1期工事分の負債を本質的には減らせていないのです。それも、2003年から毎年国からの補給金90億円を加えてもらいながらなのです。昨年までで630億円もの補給金を受けながら、1兆1千億円も有利子負債を抱え、1本の滑走路で16万回の離発着の能力がありながら、11万回さえも昨年は達せず、2本目の滑走路など全く無駄遣い(9千億円の無駄遣い!)であったのです。つまるところ関西空港は完全に破綻しているのです。神戸空港もそうですが、埋め立てて作ることにそもそも無理があったのです。しかも、関西空港はすでに14メートルも沈んでおり、しかも沈み続けているのです。

 ですからこの悲壮な関西空港を中心にした「3空港」問題を、当該の関西空港会社に一元管理させることで、関西空港を救うしかない、これが利害関係者が鳩首を集めて出せた結論なのです。橋下知事の「大阪空港廃港」とは、新自由主義者で現実主義者の彼からすれば、関西空港を生き残らせるにはそれしかないという、なぜ皆が反対するのかと思っているだろうということなのです。

 そういう意味では、橋下が沖縄の普天間基地問題に事寄せて、代替え機能を関西空港に持ってきてもいいと言い始めたのも、4千メートル滑走路が完全に遊んでいるからなのです。大阪空港が主滑走路が3千メートル、そして関西空港の主滑走路が3500メートルであることが示すように、民間空港としてはこの程度の規模があれば十分なのです。関西空港の開港前には超音速ジェットを迎えるにはなどとまことしやかに言われましたが、もうそれもありません。しかも、ジャンボは時代の流れから取り残され、機種はどんどん小型化され、中型機が主流になっています。ですから、なおさら今ごろなぜ4千メートル滑走路を造ったのかということなのです。Photo

 実は、大阪湾は、日米新ガイドライン、そして米軍再編の中で関西空港と神戸港を軸にして一大兵站拠点として考えられていることは衆知の事実です。そして兵站として考えられる航空機は、現状ではC5Aギャラクシー(右写真)です。この輸送機を受け入れるには4千メートル滑走路が必要だと言われています。ですから嘉手納をはじめ、米軍再編の要の空港には4千メートル滑走路があるのです。しかも、その数はイラク戦争やユーゴでの戦闘などで示されたように半端な数じゃない航空機が、C5Aギャラクシーを中心にアメリカ本土から飛んできます。それには、その空港が米軍専用となることが必要です。どうですか。関西空港は連絡道路さえ閉鎖すれば完全に要塞の島と化すのです。しかも、昨年、国は連絡道路を空港会社から取り上げ、国有にしたではありませんか。橋下の発言、「関空を軍事使用も辞さない」というのは、こうした国の米軍再編をめぐる動きを知ればこそと言っても過言ではないのではないでしょうか。

 私たちは、大阪の労働組合の皆さんを中心に新たに高揚が開始された「大阪港を軍事使用させるな」という動きにあわせ、この関西空港の軍事使用を許さない取り組みを早急に強めていかねばならないのではないでしょうか。

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