9・27三里塚関西集会 講演(その2)
米軍再編と日米安保体制50年を問う
- 日米政権交代で何が変わるか (その2)
講師 吉沢弘志さん
さっそくその国連総会の演説で言及された核の問題で言うならば、朝鮮民主主義人民共和国とそしてイランを名指しにして非難しましたね。そして、もう今日の新聞に載っておりますけれども、新たな核濃縮施設がイランに見つかったということで、どんな選択肢も拒絶しないとして、軍事的介入も排除しないということをチラつかせてイランに圧力をかけ始めています。それも従来のようにロシアの拒否権発動を出来ないように、あらかじめ同意を取り付けている。大変うまい。こうしたやり方っていうのは、イランの核無力化であり、朝鮮民主主義人民共和国の核無力化という方向に行ってくれるのはそれはいいことかもしれないが、みなさん、大事なことは、その後、国連で満場一致で「核の廃絶」が宣言されましたね。あれよく考えてみてください。
オバマが「核廃絶」を言うのならば、先ず、何をすべきでしょうか。自国の核を廃絶すべきなのです。そうじゃないですか。自国の核の廃絶は言わないでしょ。言わないで、自分の核軍事力に比べればはるかに小さな朝鮮民主主義人民共和国やイランを名指しして、自分の責任 Responsibirity をかぐらかす。そしてまた、反原発運動をやっておられる方はおわかりの通り、あの核廃絶宣言には原子力発電所、核エネルギーは入っていないですよね。核エネルギーがある限り、核兵器の原料は作られ続けるのですから、核廃絶ならば、単なる兵器 Wepon の廃絶とともに、核エネルギーからの撤退を共にペアーでなければまったく意味をなさないことは、こういう核科学の常識だと思います。見えてますよね。
などなどのように、オバマの政権になっても、アメリカの従来の単独主義と、そして同盟中心主義は基本的に変わらない。これが早くも反映しはじめました。そのオバマの歴史的と称されている国連総会演説の前日に鳩山総理とオバマは会談しておりますね。で、何を言ってるかというと「日米同盟の強化」をいってるわけです。 日米同盟の強化で、そして民主党が昨年度は言っていた普天間代替基地の国外移設であるとか、等々の問題については結局一言も触れずじまい。どうなのかなと思っています。一方、オバマは「単独主義からの撤退」ということを言い、そして核廃絶を鳩山も訴えて一致させ、その裏でなにかあったのではとされるのが、24日、現在の新しい防衛大臣が突如として「防衛大綱の見直し」の先送りはやらないと言い始めました。
防衛大綱というのは、ある程度の年齢の方はご存知だと思いますけれども、日本の防衛というのは大変な大きな問題を含んでいるわけですね。今、それをないことにしようとしている方が沢山いらっしゃるかもしれないけれども、日本国憲法9条において、第1項、第2項において「戦力の不保持」を謳っているにもかかわらず、自衛隊という戦力があるわけですね。これについて一貫した政府の見解というのは、「防衛のための必要最小限の戦力」という解釈を内閣法制局は一貫してとってきたわけです。その「最小限の戦力」というものを整備するために、一次防、二次防、三次防、四次防というところまで進んできたというのが70年代の話しなんです。私も高校生の頃なんかに「四次防粉砕」とか言ってやってたわけです。四次防の段階に、基本的に最小限の戦力というのは、まあ、配備ができたという考えだと思うんですけれども、それ以降は、何次防というのはなくなりました。
その代りに、「防衛のための大綱」と大筋というものをきめてそれに基づいてやっていく。これは簡単に言ってしまうならば、ある程度の所まで戦力はもう保持したんだから、これ以上そんなにお金もかけないし、戦力の拡大をしないようにしたいというのが、裏の本音にはあるわけです。要するに現状維持くらいで行きたいということがあるわけですね。その証拠に、レジメにも書きました。(3)です、その防衛大綱というのは、76年、三木内閣の時に先ず第1回目が決まっています。三木内閣というのは、ご存知のとおり三木武夫さんは、自民党最左翼と自認していた通り、自民党内最ハト派と自他ともに認められていた。考え方としては、あまり自民党的ではない。彼自身、三木武夫さん自身が「私が自民党にいるのは、私がいなくなれば自民党に歯止めがなくなってしまう」と政権段階で繰り返しおっしゃっていたそうです。そういう相対的ハト派の内閣の時に第1回目の防衛大綱がきまっていて、それは非常にゆるやかな大筋で軍縮方向に向いたものだったのです。その方向に向かって進んでいきながら、多少の揺り戻しなっかもあったわけですが、中曽根の時にちょっと変わってるんですが、18年経って村山内閣の時に2回目の策定が行われました。94年です。村山内閣はご存知の通り当時の社会党の人ですよね。どこでどう間違えたのか、自民党と社会党が連立して政権ができて、その村山内閣の時に決めてますから、これももちろん村山談話などが示すとおり、ハト派的色彩の強いものとして決められていた。要するに、防衛大綱になってから日本の戦力、自衛隊の動きというのは基本的に現状維持という方向で進んできたわけですね。
しかし、94年、もうすでに東西冷戦体制は崩れていて、崩壊していて、アメリカは新しい世界戦略の準備に入っていた時です。そこに遅ればせながら日本は、冷戦体制をふまえてということなんですけれど、冷戦体制を踏まえたから軍縮の方向というのが村山内閣の時の防衛大綱の基本線だったわけです。ところが、その後から変わっていくのですね。
話しがレジメと前後するんですが、アメリカは、先ほど言いましたように、世界最強の軍事力を維持しつつ、しかし、従来と違う枠組みでそれを展開していくと。それは何なのか。従来のようにはっきりとした敵国を決めない。地球上のどこかに、いろんなところに分散している「ならずもの国家」であるとか「圧政の・・・」とか、はては「テロ組織」とか、一体どこから攻めてこられるかわからないものに対応するという風にに軍隊のあり方を変えていきました。つまり、簡単に言ってしまうならばアメリカ軍というのは、従来は、基本的な防衛の拠点となるべき所に大量の米軍を駐留させる、そういう世界中にそのような駐留米軍基地を持つというのが方針であったものを、どんどん駐留米軍を縮小していった。そして世界中、いつでも、どこでも出ていくそういう小回りのきく、小回りというのは表現がよくない、彼らが言うのは「即応性」のある軍隊へと変身をはじめてきたわけです。日本にもそれが求められてくるのが、この後出てくるわけですね。
日本の、本来ならば、04年12月に閣議決定された新たな防衛大綱の前の、村山政権の時の防衛大綱であるならば軍縮の方向なのに、それ以降の自衛隊は、次々に、従来の必要最小限の防衛力としての戦力を踏み越えるような戦力拡充を始めていきました。ご存知でしょうが、もうすでに空母を持っていますね。ヘリコプター空母「日向」が一昨年、就航しています。それから空中空輸機も持っています。こうしたヘリコプター空母や、空中空輸機が、日本の防衛するためになんで必要なのか。ヘリコプター空母はヘリコプターを積んで、世界中どこまでも行きますよ。空中空輸機があるならば、戦闘機、爆撃機、まあ爆撃機を日本は持っていませんが、戦闘機は世界中どこへでも飛んでいきますね。そのためにあるのです。それが、しかし、04年に改定される前の防衛大綱下において、着々と準備されていったんです。あれは、新しい防衛大綱の時じゃなくて、前の防衛大綱の時に、もう予算が付けられて購入がきまったものなんです。
これは、中曽根の時に防衛大綱の枠内で、中期防といって2年間ごとに予算を付けていくんですが、それは細かな話しで、変わってきて、どこから来ているのか。成田空港、関西空港の軍事空港化、米軍再編、そして自衛隊の再編は、実はこのあたりから始まってきています。というのは、小泉内閣で04年に防衛大綱が変更されていますが、10年ですね。ところが今度、今年中に突然やると言いだしたものですから、これは5年ぶりになります。すごい短縮化でしょう。18年ぶりに変えました。10年ぶりに変えました。そして今度5年ぶりなんです。これは何を意味しているかと言いますと、アメリカという国は4年ごとにアメリカの軍事戦略を見直ししています。QDRと言います。4年ごとです。来年がアメリカの新しいQDRが出る年(10年)なんで、この現在の新しい防衛大綱案というのは、このQDRと綿密な連携をとってつくられていると報道されています。これで、数か月のずれでアメリカの戦略と日本の戦略が同時進行で作られましたね。ということは、今度、次の防衛大綱は4年後というのが決まってるようなもんです。アメリカのQDRと日本の防衛大綱を・・・・の意図がありありと見えている。
民主党はついちょっと前まで、この防衛大綱を、12月にやらなきゃならないものを先送りしますと言っていた。しかし、先ほど何度も言いますように、これも仰天したのですが、24日突然に、先送りしない、年内に策定すると言いだした。これは、どう考えても話しができすぎてるわけで、鳩山、そしてオバマのこの会談の中で恐らく何らかの圧力がかかったものと思われます。アメリカの単独主義は、いくらオバマが、Responsibirity などとと言ったところで、アメリカ主導です。しかも、そのアメリカ主導にいつも尻尾を振っていたのが、小泉以降の自公政権だったわけですよ。アメリカは、その旨味といいますかね、思いやり予算とかわけのわからない予算を付けてくれて、ここまで在日米軍を優遇している、お金の面ですよ、国はないです、世界中に。韓国だって、ドイツだって米軍いますけど、こんなに沢山やってない。だいたい韓国の10倍くらい、日本は出してますね。思いやり予算を在日米軍一人に分散させていきますと、日本の自衛官の給料よりも高いです。それくらいの思いやり予算をしてくれると。そしてグアムに移転するんだと言って、費用を70%ですかね、出してくれると。こんないい国ないのでして、アメリカは日本との同盟というのは、いろんな意味で維持していきたい。それが今回何らかの圧力がかかったものと思われます。
この伏線はあるんですね。昨年12月、もうオバマ政権は決まっていましたから、オバマ政権の主要なスタッフと、民主党の主要なスタッフとが、昨年12月都内で会合しています。これは朝日新聞が報道しました。これによりますと、アメリカ側は、日本の大使になるなると言ってならなかったですが、ジョセフ・ナイですね。そしてマイケルグリーン、こういう日本のことをよく知っていると自称、他称している専門家たちが来て、何と言ったかというと、4つの柱を上げました。これはアメリカ側が、もし民主党が政権をとったとして要求する大きな柱として、日米地位協定、インド洋での給油、アフガンへの支援、そして普天間の移転、この4つの大きな柱として、この一つに対してでも民主党が難色を示すならば、オバマ政権、アメリカ民主党は、日本の民主党を敵とみなさざるを得ないと、ジョセフ・ナイが言ったと朝日新聞に報じられています。ここまで偉そうなことを言うわけですね。
さらに8月28日の朝日新聞、先ほどあげたマイケル・グリーンが寄稿していました。これによると民主党政権になるだろうけれども、民主党政権がアメリカに対して対等な同盟関係などと言ってるけれども、アメリカが要求していることについて否定的な、表現は違いますよ、否定的な方向を示すならば、日本ははっきり言って痛い目にあうだろうというようなことを朝日新聞に投稿をしているのですね。アメリカの基準は、オバマ政権になってもまずアメリカ単独主義は変わりません。それにとにかく同盟という名目において協力してくれる国を1国でも多く集めたい。金を出してくれる国はうれしい。その場合、日本は今までも実績もあるんだけれど、一番有望な同盟国なんですね。ここのところは崩してはならないという基本線ですよ。恐らく、鳩山に対してそういう圧力が加えられたものと思われます。
つまり、給油やめますよといってヒラリー・クリントンはOKを出してますよね。その代りアフガンへの支援を考えるという表現になってるわけです。気をつけなければならないのは、こういう外交的な事例というのは、一つの面から見てはいけないんです。外交の場、国連の場なんていうのは、国連に来る外交官というのは2枚舌どころではなくって、3枚舌、4枚舌、5枚舌ですから。オバマが、単独主義はなんとか言ったってですね、あれは5枚舌から言ってるかもしれないのです。本心は何なのかということなんですね。となると、突然その直後に、先送りするんだといっていた防衛大綱の見直しをやっぱり年内にするんだと言いだしたことには、やはり米軍再編の基本路線は守らなければならないよという圧力がかかったはずです。というわけで、米軍再編の話しになって行くわけですね。
(つづく)
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