9・27三里塚関西集会 講演(その3)
米軍再編と日米安保体制50年を問う
- 日米政権交代で何が変わるか (その3)
講師 吉沢 弘志さん
米軍再編、先ほど言いましたように、アメリカは新たな世界秩序、グローバル化の中で、どのような軍事力を展開するのかということを考えてみます。とりわけアジア・太平洋域での戦力のありかたということについて大きな転換を日本と共同で行っています。一つの例ですけれども、皆さんはFENというものをご存知だったろうと思います。Far East Network ですね。アメリカ軍向けのラジオ放送です。Far East ですから極東放送ですね。これが、ずっとやっていたわけですね。英語を勉強する時に、FENをつければ結構あるよとかいって、高校や大学の中で聞いている人がいました。私なんかは、アメリカ帝国主義軍の放送を聞いているなんて何事だなんて、怒り狂って(ママ)ましたね。今、FENないんですね。なくなってるじゃないといって、今、ここに書きましたけれど、AFNなんですね。American Forces Network 米軍放送網といって極東じゃないんですね。えっ、いつ消えたんだろうと調べたら、97年10月にFENがなくなって、AFNになってるんです。ピンと来るわけですね。その直前、9月23日、新ガイドラインが国会において決まっています。ここにおいて、日米安保条約第4条にある、いわゆる極東条項というのは消滅しました。「日本国および極東」という文言にはあるんですが、もうそれを超えて米軍は行っていいし、日本の自衛隊もそれにくっついて行っていいんだよというのに変わったのが新ガイドラインですよね。これが9月23日に国会を通り、その直後に、FENがAFNに変わります。
これくらいアメリカは対応が早い。日本が少し遅いんですよね。この新ガイドラインというのは、96年4月の橋本・クリントン宣言、日米安保共同宣言、そこから派生してきたものですね。97年9月ですね。先ほど申しましたが、日米安全保障条約のあり方が、「国内および極東」と文言上限定されているのに、それを超えて、米軍も自衛隊も展開を可能にしていったのが新ガイドラインです。これをもう一回かんがえるべきななんですが、安保をめぐる、安全保障条約をめぐる様々な条例とかですね、法令とかね、極めて奇妙なものです。世界的に見てもこういう例はないんだと思う。日本国憲法は、国の最高法規であるはずですね。そういう風に憲法に書いてある。最高法規だと。最高法規であるならば、二国間の条約は順守されなければならないとは書いてあるが、最高法規の下位の法令のはず、法体系のはずなんですね。憲法があり、安全保障条約があるはずなんです。つまり、安全保障条約に関わるすべての関連の法令等々は、憲法の下にコントロールされるはずなんですね。違いますよね、今は。今はと言うより、そもそも自衛隊が発足した時から、明らかに憲法に明文違反してるのに、様々な解釈によって現状を認めてきてしまって、現在に至っている。ここからそうなんですが、日本国憲法よりも、日米安全保障条約のほうが、言いかえれば日米同盟が憲法の最高法規の上にあるという極めて奇妙なものです。それに政府だって、「日本は戦争を放棄している」と繰り返し確認しているにもかかわらず、十分に戦争ができる軍事力というものを、日本は着々と蓄えてきたし、これからも蓄えていくだろう。
これをなんで憲法に照らし合わせて「間違いだ」と言わないのかというねじれ現象があるのですが、その安保条約そのものが今、大きく変わっちゃてる。とりわけ新ガイドラインに基づいて、周辺事態法。「周辺」というのは、国会答弁によると日本の安全保障に影響を及ぼすならば世界中どこでも「周辺」なんだと。だから、インド洋にいける、イラクに行けるわけですね。こうした世界を対象にした安全保障になってる。船舶検査活動等々のものが出てくる中で、この成田空港も関係している「概念計画5055」というのが02年末に導入されています。これは新ガイドライン、そしてそれに基づく周辺事態法等が整備されましたけれど、大事なことは、従来の戦争のあり方は明らかに敵となる国がある、敵となる国に対して日本が防衛するなり、攻撃はしないという名目であっても、防衛をするとするならば国を挙げてその国に対して防衛を築くわけですね。そういう構造になっていたんですね。
所が、現在のアメリカの、およびアメリカに追随している日本の軍事戦略というのは、どこの国が明確な敵国というようなとらえかたはしないんですよ。いつでも、どこでもでかけていくアメリカ軍と、いつでも、どこでも、それにくっついていく、場合によっては単独でも出たいという自衛隊。こういう構造になると、国民に対するですね、軍事というもののコンセンサス、合意というものが従来とちがうんですね。あの国がこれだけひどい国で、こちらに攻撃をしてくるからそれに対して日本は防衛態勢をするんですよというのではなく、いつ、どこから攻撃を受けるかわからない、国内でテロがあるかもわからない、それにそれこそ即応していかなければならない、国民生活も。つまり国民生活総動員で、アメリカに追随した日本の軍事発動というものを組み込んでいく。ほんとに国民総動員していかなければならない。それが有事国民保護法制、体制なのですね。その先取りになったのがこの「概念計画コープラン5055」です。ここにおいて朝鮮有事というものを想定し、朝鮮半島から、これは朝鮮民主主義人民共和国を考えているんでしょうけれども、難民も含めて大量の人が日本にやってくるということを想定してそれに対する有事発動と、国内の成田空港、関空を含めた様々な港湾、空港施設の軍事的な供用というものを計画したものです。
これらから、もう一度繰り返しますが、あの国が旧ソ連邦ならソ連邦がミサイル攻撃してくる、陸上攻撃をしてくるので国民全体で態勢をとりましょうねというのじゃない。いつ始まるか、どのように来るかわからないというものに対してフレクシブルに、即応的に対応していく。そのためには、空港も、鉄道も、病院も、場合によっては民間の敷地なども供用してくださいよというのが、この「5055」ではっきりと謳われていて、すでにそこに基づいた陸上自衛隊の図上訓練などが始まっているわけですね。そこから有事法制を先取りし、自民党と民主党が、手を携えて、有事法制を粛々と作り上げていった経緯があるわけですね。それが04年の話です。
翌年には、この「概念計画」は「共同作戦計画コープラン5055」に格上げされて、それに基づいて具体的な所がつめられて、そこに米軍再編がはいってくるわけですね。米軍再編は、05年10月中間報告が出ました。これが、「日米同盟 未来のための変革と再編」のこの文章の中に盛り込まれてるんです。これが、米軍再編のための中間報告とマスコミに報道されてますよ。翌年5月に「米軍再編ロードマップ」というのが出されて、いわゆる辺野古のV字型滑走路なんかがそのころ出されたんですが、実は現実には「ロードマップ」には具体的戦略は書いてないんです。具体的戦略が書かれているのは、この中間報告とされている05年10月の文章なのですよ。今、これに基づいて日本の自衛隊も、米軍も着々と進めているということで、事実上、安全保障条約は来年50年を迎えますが、この安全保障条約よりもむしろこの「日米同盟 未来のための変革と再編」の方が事実上の安保条約になっているといっても言い過ぎではなく、これまたとんでもないねじれですよね。日米安保委条約はいやしくも国会の議決を得ていますけれども、この「日米同盟 未来のための変革と再編」は、国会の承認なんてとってないですよ。勝手に当時の自公政権とブッシュ政権が2+2で話し合って決めただけです。
(つづく)
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