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2009年10月 7日 (水)

9・27三里塚関西集会 講演(その1)

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米軍再編と日米安保体制50年を問う

 ―日米政権交代で何が変わるか(その1)

講師・吉沢弘志さん(パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会代表)

 どうも。お集まりの皆さん、こんにちは。パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会という長い名前ですが、そこの代表をしております吉沢です。今日お招きいただいてお時間をいただきましたことを感謝するとともに、私たちは、住んでいる所のすぐ目の前が陸上自衛隊習志野基地なんですけれども、そこにある中央即応集団というテロ、そして有事の際、また海外派兵の先遣隊である部隊、そしてその場所に2年前、11月29日に私たちの反対を押し切ってパトリオットミサイル、PAC3のシステムが強行的に導入されてくる。その後、3回にわたって移動展開がされてくるという動きに対して、私たちは地元の住民として、そしてまた、このミサイル防衛の名の下に、アジア・太平洋の安全保障のバランスを大きく軍事優先にしていく日本、アメリカの同盟の名に基づいた軍事的な暴挙に対して粘り強く闘い抜いていきたいと思っております。

 この闘いは、市東さんをはじめとする44年間と聞きましたけれども、三里塚の闘い、私自身も17歳の時に、71年の3月の強制代執行の時の闘いに参加した者なんですけれども、それ以来の三里塚との細い糸でつながっていたわけですが、もうひとつ、私たちのパトリオットミサイルに反対する、陸上自衛隊の再編、米軍再編に反対する闘いと、三里塚の命を張った闘いとの強い連帯をここで表明したいと思います。

政権交代はしたけれど

 09927_8ご存じのとおり、アメリカと日本は政権交代というものを市民が選択しました。同じような構造があるかもしれませんが、ブッシュ政権、そして小泉以降の自公政権というものの余りのひどさというものの中で、アメリカの市民が、そして日本の市民が何とか変えてもらいたいと、チェンジですね、そういう質がオバマを押しだし、民主党の大勝を生みだしたのだろうと思います。そこにはアメリカであれ、そして日本であれ、市民の熱い期待があることは事実です。その事実をオバマは、オバマ政権が、はては民主党を中心とする政権がどこまで担えるのか、それに対して私たちに何ができるのかというのが、これからの私たちの大きなテーマになっているだろうと思っています。

 このレジメを作ったのが20日過ぎなのですが、その後、矢継ぎ早にアメリカと日本の軍事、そして政治をめぐる情勢というものが変化、変わってきていて、予断を許さない状態になっています。

 先ず一つは、このレジメを作る段階で、オバマ政権はポーランドとチェコを舞台とするヨーロッパミサイル防衛、MDですね、チェコにレーダー基地、ポーランドにPAC3の基地を置くという計画の凍結を発表しました。私たちにとってみれば、大きな朗報であるわけです。余り伝わっておりませんけれども、チェコにおいてはこのミサイル防衛への参加に対して、チェコの市民の広範な、粘り強い、そして非常に多様な闘いがあって、その動きがチェコの旧政権を倒していくという流れがあったことも事実なんですけれども、ミサイル防衛の凍結を発表した。その流れというのは、すでに今年の初めの段階で、オバマ政権はミサイル防衛への予算の大幅削減ということを発表していたわけです。さらに御存じのとおり沖縄にも配備されるのかと言われていたF22の製造の凍結も発表いたしました。このように、オバマ政権は、表向きを見てみるならば、従来のアメリカの軍事一辺倒の政策を大きく変更していくとみられるわけですね。

 しかしながらオバマ政権は、ではアメリカ予算の中の軍事予算そのものを削っているのかというと、実は微増化しているのです。オバマ政権のキーワードというのは、日本風にいうならば、費用対効果です。従来のような湯水のように、アメリカの財政をひっ迫させていく、しかし効果がないというような軍事費の使い方ではなく、とにかく有効なものに使っていくという方向に変えていくというのがあるわけですね。今回のヨーロッパMDの凍結というのは、この勢いでアジア太平洋域における韓国、日本を含んだミサイル防衛からの凍結という方向につながっていってほしいと願っているわけなんですが、実はそうもいかないという事があるわけです。

アメリカの単独主義

 ご存じのとおり、23日には、オバマ大統領は国連本会議においてあの演説を行ったわけですね。アメリカ単独主義からの撤退ということを謳ったわけです。私のレジメにありますように、現在、日本は大きく巻き込まれている。それも、私たちの貴重な税金を大量に垂れ流しながら巻き込まれている所の米軍再編というのは、ブッシュ政権の中で生まれてきたものです。ブッシュ政権は、子供、息子のブッシュ、今、彼の母親は自分の息子のことを大変恥に思っているそうですけれども、あのジョージ・ブッシュ・ジュニアの方があまりにひどかったものですから、かすんでますけれども、こうした路線というというのは別に彼が始めたものではなくて、なんとなく相対的に良いように見えてしまうかもしれませんけれども、クリントン大統領、2期務めましたよね、クリントン大統領の時にも実は着々と進んでおりましたし、その前のブッシュの父親の時にも。そもそもカーター大統領の頃から少しづつ進んでいたアメリカの新たな世界軍事戦略の一環になっています。09927_6

 そのアメリカの軍事戦略の一環、何なのかと言ったら、御存じのとおり1991年12月31日をもって旧ソビエト社会主義共和国連邦が解体し、独立国家共同体になるという、従来のいわゆる冷戦体制、社会主義陣営対自由主義陣営、資本主義陣営という政治と経済と軍事を巻き込んだ冷戦体制というものが、基本的に崩壊した。その崩壊が何をもたらしたかというと、アメリカの軍事力、世界最大の核兵器も含む軍事力が、ソビエト連邦を中心とする社会主義政権に対する大きな軍事的歯止めになっているというその大前提自体が崩壊していくということなんですね。

 そしてアメリカ合衆国にとって、そうした冷戦体制の崩壊というものは、進路としては2つの可能性があったわけです。つまり、もう冷戦体制はない。あいかわらずアメリカもロシア連邦も核ミサイルを持ち、それをそれぞれの国に向けて照準をロックしており、各大統領は、発射ボタンを押す権利というものをその大統領就任とともに受けておりますけれども、現実的にもうロシア連邦対アメリカ合衆国という戦争のあり方はもうあり得ないだろう。ありえないという状況の中で、しかしアメリカ軍は、アメリカの巨大な軍事力を削減して国内の、および国外の広い意味での社会の福祉のために予算を配分し、軍縮していくんだという方向が1つ。

 しかし、アメリカ合衆国はそのゆな道を取らなかったわけです。アメリカは、今までのような強大な軍事力をきちんと保持していく。こういう方針を採ったわけですね。もちろんそこには、いろんな政治的な暗闘があるわけですけれども。そのためにはどうしたらいいのかというわけで旧ソ連邦を中心とする社会主義勢力を敵とする軍事の構造というものに代わる新たな軍事構造、つまり新たな敵を見つけなければならないわけですね。この新たな国というのはもう一つの国という風に確定することはできなくなった。だから、それまで考えることもできなかったような、たとえば「ならず者国家」とかですね。「ならず者国家」というのはよく間違えますけれども、ブッシュが使ったんではなくって、クリントンのころから使われている言葉です。旧ソ連、ロシア連邦を敵とするのではなく、小さな国かもしれないけれども、軍事力はそんなに大きくないかもしれないけれども、何か悪さをする、その理由として民主主義が徹底していないとか、独裁体制であるとか、こういう言い訳をつけるわけですけれども、「ならず者国家」と表現をしてみたり、「テロ国家」と表現をしてみたり、さらにうまいことに9・11同時多発テロ以降は、テロ組織というものも敵にする。常識で考えれば、アルカイーダも含めたテロ組織が核兵器を開発し、今度はその核兵器を載せたミサイルを作り上げて、アメリカならアメリカにぶちこむなど出来るわけがないのです。常識で考えれば。しかしあの9・11のショックを上手く使い、アメリカ合衆国はあのテロ組織もまた自分たちの軍事力の格好の敵ととらえていったわけですね。

 それ以降、ご存じの通り9・11直後のアフガン侵攻、それから2003年3月20日からのイギリスと結託したイラク侵攻。イラク戦争と言うのは間違いです。国際法上あれは戦争ではなく、アメリカとイギリスが勝手に攻め込んでいったイラク侵略攻撃なわけですが、等々いうことをやってきた。09927_7

 それに尻尾を振っている極東のある国がいらっしゃるわけですけれども、日本は・・・・なわけですね。アメリカと同じく旧ソ連邦を敵国とする軍事戦略と防衛戦略というものを作り上げてきたわけです。それが旧ソ連邦が崩壊した段階で、もはや使いものにならなくなっている筈なんです。で、アメリカ合衆国は、先ほど申しましたように、すでにクリントン政権の段階から、どのようにアメリカの軍事力を世界的に認めさせていくのか、存在意義を認めさせていくのかいう変身ぶりを着々と、そして粛々と進めてきた。日本の自衛隊、防衛庁に関してはそうした動きは非常に鈍かったわけです。その萌芽といえるものは例の細川政権の時に少しはあったんですよ。来年も、1月に観閲式というのがありますが、当時の細川総理は、それまでの各総理大臣は観閲式、閲兵式の時にはいつもモーニングでくるわけですね、小泉だって、それ以降もモーニングでシルクハットなんかを持って構えて行くわけですけれども、細川さんは普通のスーツで行ったんですね。これだけでも画期的なんですが、しかも、あいさつの第1声で、「自衛官の皆さん。これからは軍縮の時代です」ということから挨拶を始めた。大変だと一瞬思ったんですけれども、細川政権、それからこけちゃったものですから、従来の通りにいってしまったんですが、自衛隊は従来の対ソ連型の軍事展開というものをまだしばらくは脱却できない状態でいました。それが、しかし、今、大きく変わろうとしている自衛隊のあり方、米軍再編との組み合わせという中で変わってきたというところが出てくるわけです。

「ならずもの国家」、テロ対策とは

 Photo_3 前に戻りまして、アメリカは、ブッシュ、クリントン、ブッシュジュニア、そしてオバマと続いているアメリカの軍事戦略の特徴は、レジメにも書きましたように、旧社会主義対資本主義とか、社会主義対自由主義とかいう名目は成立しませんので、先ほど申しましたように普通じゃ考えられないような経済力も軍事力も乏しい国を「ならず者国家」だとか「圧政の・・」とかいろんな言い方をするわけですけれども、やってくるわけですね。私は長い間チェルノブイリの救援活動をやっていまして、チェルノブイリの原発に一番汚染された国はベラルーシという国です。日本でいえば北海道よりちょっと大きいくらいの国ですね。主だった産業などほとんどなく、国土の圧倒的な部分が放射能に汚染されている。この国も、ブッシュ政権の時には「圧政の・・・」と並べられているのでびっくりしました。こんな国を、比べたらアメリカの軍事力など何千倍、何万倍ですね。のようなものがあるくせに、そんなものを担保するために、そんなちっぽけな、しかも住民が放射能の後遺症に苦しんでいる国を扱うのか。ほんとに怒り狂った(ママ)んですが、そのようなことをやってきた。これは世界的な世論の支持を受けられません。ですから単独主義に走るしかないわけですね。本来なら、国連加盟国は何らかの安全保障活動を軍事的に行うには、国連の枠組みでなければいけないはずです。国連憲章上は。そのために国連軍というものがあるわけです。国連が結成されてから60年経つわけですけれども、今だかって一度も正式の国連軍というのは組織されておりません。朝鮮戦争の時に、アメリカ軍は勝手に「自分は国連軍だ」と名乗って行きましたけれど、あれも正式の国連軍ではない。とにかく1回もない。もちろん、中国や、旧ソ連、そして今はロシア連邦が常任理事国として拒否権を発動するわけですけれども、とにかくそれを待っていてはダメだということで、国連の枠にとらわれない単独行動をとるわけですね。その単独行動に、とにかく「この指とまれ」とくっ付いてくる国をひき連れて有志連合にする。これがアフガン攻撃であれ、イラク攻撃であれ一貫しているわけなんです。

 今回のオバマの23日、まだ4日前ですね、の演説において新聞でも大きく「単独主義から国際主義へ」と謳われていて、おっとと目を引かれますよね。実はこれは非常なトリックがあります。オバマという人物は、大変に演説がうまい方であることはご存じのとおり。今回の国連総会での演説も原稿を持っていないですよね。原稿みないであれだけさーっとしゃべれるわけですね。ホワイトハウスは、その原稿をさーっと電波に乗せるわけです。インターネットの時代ですのですぐに読んでみると、オバマは勝利宣言演説から、大統領就任演説から、カイロ演説、それからプラハ演説も含めて評判になった演説を見てみますと、非常に上手なレトリック、言葉の使い方をしていて、一見たいへん快く支持しちゃうんですけれども、よく読んでみると落とし穴があります。今回の単独主義からの脱却というのもそうなんですね。これはレジメを修正しなくちゃいけないのかなと思いましたけれど、修正する必要はないと言う結論に達しました、演説をよく読んでみた結果。。なぜかというと、アメリカは一方的に従来のこれまで単独主義と呼ばれてきた行動の形態から足を抜くと言ってるんじゃないですね。

 そうではなく、これは彼の一つのキーワードなんですがResponsibirity、責任という言葉をよく使うんですよ。アメリカ国民の責任、それから同盟国の責任、そして地球、すべての人類の責任とうまく入れ込みます。その責任という名において、核兵器にしても、温暖化の問題にしても、貧困の問題にしても、これは全人類の問題であって、全人類がResponsibirity、責任において解決をしていかなければならないという言い方をするわけですよ。アメリカの問題だったら、アメリカ国民の責任においてという表現を使うわけですよ。そうしますと、あの国連総会演説のレトリックというのは、今地球人類が直面している問題として核の問題、温暖化の問題、貧困の問題ですね。インフルエンザの問題も触れていました。そうしますと、それに60数億の人類が共に責任をもっていると。ここでうまくずれるんです。その責任はアメリカが単独で解決できることではない。当たり前なんですね、そんなこと。それに対して、全人類の、あるいは同盟国の責任の名において、共に問題の解決に力を尽くしていきましょう、と、こういうレトリックです。つまり、これは相変わらずアメリカは単独主義なのですよ。ただ、今までのような、なりふり構わない俺についてこい式のブッシュのようなことは通用しないし、お金もかかってしょうがない。であるならば、とにかく正当性、責任の言葉を使って、正当性の名の下に、共に、共にというのは同盟ということですよ、同盟を組んで問題解決に進んでいこうではないかということなのですね。ですから、これは決してオバマ政権は、これまでの単独主義から完全に手を引いてですね、とにかく国連重視で、そして国連の枠組みに従ってやっていきますということではありません。そうではなく、従来の従来のような俺についてこい的やりかたではなく、一歩引いて人類の責任の名において共に手を携えていきましょうね。でもアメリカはリーダーシップはとりますよ。こういうことです。(つづく)

なお、この文章は吉沢さんの語られたものを全文起こしておりますが、点検、校正をしていただいておらず、見出し、文章の責任は全て管理人にあります。ご了解ください。

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コメント

要求書

市東さんの土地強制取り上げをやめることを求める要求書

鳩山由紀夫首相様
前原誠二国土交通省大臣様
辻元清美国土交通省副大臣様

2009年10月6日
京都生協の働く仲間の会

私達は、以下のように、要求しました。しかし、貴職は、拒否回答を行ってきました。絶対に認められません。改めて、千葉県成田の、三里塚の市東孝夫さんの農地取り上げ、空港建設強行を絶対にやめてください。
以上。
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高槻市の辻元清美事務所に、雨の中、要求書を提出しました。ともに頑張りました。

投稿: 京都生協の働く仲間の会 | 2009年10月 8日 (木) 11時49分

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