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2009年2月 5日 (木)

2月3日 農地死守裁判 市東さんの陳述

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 この裁判は、千葉県の不当な決定に基づく不当な提訴です。まったく認めることができません。

 私の身に起きたことは賃貸借の「解約」というものではなく、農地の取り上げです。その目的は空港建設。空港のための「土地収用」です。農地と農民の権利を守るはずの農地法を使った、あからさまな農地強奪です。こんなことが許されて良いはずがないのです。

 しかも明け渡しを迫る畑の位置が間違っています。「南台41-9」の土地について、1984年当時、地主の藤崎政吉さんは、私の家の借地ではなく石橋政次さんの借地としていました。別の裁判で、空港会社はこのことを認めています。ところが「それは藤崎の間違いだった」と言い訳し、今回、提訴におよんだのです。不誠実としか言いようがありません。

 私は、このような不当な提訴は、ただちに却下するよう求めます。

●農地法による農地取り上げは不当

 空港会社が明け渡しを求める畑は、南台と天神峰の畑です。このうち天神峰 には、離れや作業場、ハウスなどの建物があり、これらの撤去も求めています。みんな、私の生活にとって大切なものばかりです。

 借りた土地である以上、地主との信義に反することは許されません。私の祖父は、当時、原野だった土地をひらき、農地に作り上げ、以後約90年間、大切に守り続けてきました。地代もきちんと払い続けてきました。信義を破らず、これからも誠実にこの畑で農業を続けたいと望んでいます。

 農地法は第1条に「耕す者に権利あり」をかかげています。

 この農地法のおおもとを勝手にねじ曲げてはなりません。千葉県知事が空港会社のお先棒をかついではなりません。まして、農家の代表であるはずの農業0923_5 委員会や農業会議が、農地取り上げを手助けするなど言語道断です。

 土地収用法は、公共事業のために個人の権利を取り上げる法律です。それ自体不当ですが、では、いま成田でこの収用法を使わないのはなぜか? 空港建設があまりに強権的で不当なために、事業認定が失効したからです。

 では、土地収用法で取ることができなかった農地を、農地と農民の権利を守る農地法で取り上げることができるのか。できることではありません。農地法のおおもとを、ふみ破ることだからです。

 そもそも、空港会社は私に対して、明け渡しを要求する資格があるのでしょうか。いったいどれほどの違法を、空港会社は重ねたことか。

 無断で売買したこと、それを隠し続けたこと、地代をだまし取ったこと、転用目的で買い上げながら転用せず、農地を農地として所有し続け、それを貸し出したこと。これらについて農業委員会に手続きもしていません。農地法違反だらけじゃないですか。これこそ信義を破ることではないですか。

 これらの悪事を隠すために、空港会社は、売買年月をいつわって農業委員会に申請しました。決定が下りてから、「間違っていた」などと訂正しました。まったくメチャクチャとしか言いようがありません。その空港会社が農地法をたてに明け渡せと迫ることなど、許されることではないのです。

●親子代々90年耕作のこの土地こそが私の畑

 空港会社は空港建設のために、知事に対して解約の許可を申請しました。千葉県は「農地を農地以外のものにするのが相当」として許可しましたが、空港用地とすることが「相当」だとする判断は、正しいのか。断じて違います。

 暫定滑走路の誘導路は、南台の畑を避けてつくったため「へ」の字に曲がっています。天神峰の畑は空港用地にかかっています。だから、畑を取り上げて誘導路を直線にすることが相当だというのです。

 じつに身勝手な話です。完成の見通しの立たない平行滑走路を、欠陥をかか えたまま、無理に作ったのは空港公団です。畑や現闘本部の建物や共有地があるのに、「運用にはまったく問題がない」と言いはって強行したのです。

 それを今になって、「非効率だ」と言って、取り上げようとすることは本末転倒です。地域の住民を苦しめる欠陥空港など、農地にもどすことこそ「相当」です。

 あげくに、県の役人は「1億8千万円の離作補償は、農業収入の150年分にあたる」から十分だろうと言う。農業を守るべき役人が、カネさえ出せばいいという姿勢に、たまらなく腹がたちます。

 私は、代々守ってきたこの畑で野菜を作り続けることに生きがいを感じます。農地は単なる土地ではないのです。長い年月をかけて、有機の土、完全無農薬の畑につくりあげてきたのです。祖父が切り開いた時から親子3代にわたって精魂込めた、この土地こそ私の畑です。そして農地と農業を大切にする考え33_3 方が、いま、大事だと思います。

 私が畑を守る理由はこればかりではありません。国と空港会社が、力ずくで取り上げようとしていることが問題です。政府は「強制的手段を放棄する」と約束し、空港会社の社長は「謝罪」文を書いて頭をさげました。だが、40年間、農家を虫けらのように扱った空港建設は、今もまったく変わりません。法律も民主主義もない。あるのは強権とカネの力です。このやり方は絶対に受け入れることができません。

 だからここに住むし、この畑を耕すのです。私の畑は「この農地」でなくてはならないのです。

●守られるべき、働く者の権利

 農業会議を傍聴して驚きましたが、千葉県では、月に300件の農地が農地以外のものに変えられています。まともな審査もしないこの無責任が、耕作地放棄や休耕地を生み出しています。

 これを進めているのが、農業切り捨ての政策です。いま、大半の農家は農業で食べていけません。トヨタやキャノンの輸出と引きかえに、農産物をどんどん輸入しているからです。

 食糧自給率40%、農薬混入の輸入食材、汚染米や食品偽装、世界的な穀物不足などが、大きな問題となっています。そのうち本当に食えなくなるという不安など、おかまいなしに、農水省は農地の「利用権」と「所有権」の分離を言い0923_7 だしました。もうけを追い求める企業に、農業と農地を引き渡せと迫っています。これは「耕す者に権利あり」の否定です。農家を無くすということです。

 農地法で農地を取り上げるという私の農地の問題は、農業つぶしそのものだ と言えると思います。このことからも、私の裁判を大切だと考えています。

 裁判所による強制執行に対して、品川のホテルの従業員が身体を張って闘う姿が大きく報道され、共感を感じました。人は働くことに生きがいを感じます。労働者の職場、農民にとっての農地――これが守られないで、どうして社会が成 り立ちますか。農地は私たちの命なのです。

 行政による一片の決定がなんですか。誠実に働こうとするものが正しい、と私は思う。私は正々堂々と、自分の農地を守ります。千葉県知事の無責任で不当な決定や、まったく卑劣な空港会社の農地取り上げに対して、一歩も引かず闘います。

 最後に――

 私は、露地栽培を基本とする、有機・無農薬の産直農家です。毎日、休む暇のない仕事を続けています。空港会社の不当な提訴は、生活に大きく影響します。とりわけ火曜日は産直の出荷日でもあり、本当はとても出廷できる状態ではありません。

 南台と天神峰の2つの裁判と、行政訴訟の併合を強く要請して、意見陳述とします。

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