萩原進著「農地収奪を阻む」が出版
三里塚反対同盟事務局次長萩原進さんが、三里塚闘争の新たな爆発に向けた渾身の本を書かれ、出版されました。
「農地収奪を阻む」と題されたこの本を読み進みながら、「血沸き肉踊る」とはこのことかと思いました。萩原さん自身の43年にわたる成田空港反対=三里塚闘争の怒りと怨念がついに国家権力を捕え、追い詰めている、この一言に尽きると思います。
「第1部 闘いは大地とともに」は、文字通り萩原進さんの43年にわたる、いや人生全てをかけた怒り、国家権力によって人生を捻じ曲げられたことへの怒りに満ちた、しかも、闘いの中でのご本人の苦闘に満ちた総括が語られています。
例えば、83ページには親しかった石橋政次(元反対同盟副委員長)の裏切りについて、こう語っておられる。
「この時、『裏切り者許さず』という闘いの原則の深い意味を思い知った。あの石橋を弾劾に行くということは、自分自身の闘いへの態度を決めなければならないということだ。自分自身が態度を決めなければ、他人の弾劾などできない。裏切りの弾劾とは自分自身に対する確認であり、退路を自ら断つということだ。ここのところをあいまいにしたら、金や暴力、物量で圧倒的な国家権力を相手に真剣な闘いはできない。他人への批判は、そのまま自分に返ってくる。しかもこれは、一度確認すればそれで済むという問題ではない。闘いの局面、局面で自己点検し、自己変革しなかったら、他人への批判や弾劾はできない。」
こういう想いを多くの人は感じたのではないだろうか。それを、この簡潔すぎるともいえる43年の闘いの歴史を語るなかで、それぞれの場面に挿入している。ゾッとするような想いを感じながら、「そうだったんだ」という驚きに似た思いを何度も抱きながら読ませていただいた。三里塚闘争に関わってきたつもりの人にとって、避けて通れない必読の書になっているように思う。
「第2部 崖っぷちの食と農」。ここで、秋田の大潟村の坂本進一郎さんと匝瑳市のコメ 農家、小川浩さんとの対談と、同盟の市東孝雄さんと鈴木謙太郎さんとの対談の二つを通して、「日本農民の先頭に立つ」「労農同盟」の根本となる農業問題に迫る。「FTA反対」を掲げる萩原さんのこの2年余りの提起の核心が語られている。43年にわたる耕しながらの闘いの中での教訓と、市東さんへの農地強奪の攻撃を前にした、三里塚闘争の 今後を解明し提起した部分ともいえる。非常に明快に以下のように語る(同書208ページ)。
「農業の本来あるべき姿、というものをおれらはめざしているということだ。さっきもでたけれど、有機・無農薬は当然のこととして、農業というのは本来家族農業だ。それ以外の形態はありえない。資本の論理がのさばって、農業の大規模化が日本の農業の救世主であるかのような論議が依然として横行している。しかし、それは大潟村や北海道の農業を見れば破綻していることは明白だ。そういう国内農業の問題だけじゃなくて、アメリカにしたってオーストラリアにしたって、ああいう大規模農業という方式自体おかしい。農業の本来のあり方に反している。だから、農薬、化学肥料、遺伝子組み換えのような矛盾が噴出してくる。 それと、単作農業というのも疑問だ。麦なら麦、イモならイモという特化した農業というのかな。『50品目』じゃないけど、いろいろな作物を回転させて作っていくというのが農業本来のリズムにあっている。そして、循環型農業だ。牛、馬を昔のようにそのまま復活させるかどうかはともかくとして、有機肥料を自分のところで作り出し、それで農作物を作り、それをエサに酪農を展開する。」
これほど明快に農業の「本来の姿」を闘いの中から提起している凄さに、本当に引き込まれた。洞爺湖サミットの中で、フィリッピンの農民がグローバリズムに反対して、農業は家族農業が本来の姿だと訴えていたのを思わず思い出した。
そして「第3部 三里塚労農連帯の地平」で、動労千葉の中野洋顧問との対談(07年7月)を通して、三里塚反対同盟と動労千葉が作り出した「労農同盟」の地平を、今の局面で新たに発展させ、労働者階級が農業問題を自らの問題としてとらえ切り、農民階層の闘いを同盟軍とする新たな地平に向かった提起がさらに行われている。
みなさん。ぜひ、読んでください。この書に込められた萩原さんと三里塚反対同盟の43年にわたる闘いの地平に触れることは、この日本の状況を突破する大きなカギとなることがおわかりいただけると思う。やはり、三里塚は全人民の結集と共闘の砦、「反戦の砦」であることを確信できる書です。
この本についてのお問い合わせは、関西実行委員会 (℡ 0799-72-5242) に。
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