三里塚をどう語る?
9月22日の「三里塚関西集会」を宣伝するために、大阪と神戸で3度、マイクを持って街頭に立った。あわせれば1時間半ほどしゃべった。しかし、いつものことだが、何を言ったら道行く人に「三里塚が伝わるのか?」と悩む。
大きな原因は、関西でマスコミが「三里塚」をほとんど報道しなくなって20年近くなるということだ。道行くほとんどの人が、「三里塚」を知らないか、知っていても報道されないから「とっくに終わっている」と思っている。この春の「開港30周年キャンペーン」でさえ、関西では関東と比較して、ほとんど流れなかったに等しいのだ。
だから、必ず、三里塚農民が43年間も闘い抜いていること、国策を相手に今も押し返していることを先ず言う。そして、成田空港が半分も完成していないことを。その上で、何を言うのかだ。そのことが、同時に、三里塚闘争が今、どういう方向に向かっているのかを、そしてそれが道行く人々にどう関わるのかを指し示すことができなければ、ほとんど聞いてもらえない。共感を得ることはできない。
上の写真は、暫定滑走路の南部分で、東峰の森が元の姿を残し、清水の畑に東峰の森側のフェンスがないことからも、少なくとも3~4年前の航空写真。滑走路南端手前の右側に開拓道路が滑走路間近(50メートル)まで迫っていることが細いがくっきりと見える。そして、滑走路南端から南に100メートル足らずの所にもやしの先のように見える東峰神社がある。あるいは写真左上に白く見えるのが誘導路だが、市東さんの畑に阻まれ誘導路が「ヘ」の字に屈曲し、滑走路に60~70メートルに迫るっていることが判る。これらはいずれも国際法で求められている安全性を無視したものだ。
そして、滑走路南端からさらに300メートルくらいだが、小さく白く見えるところに島村さんの家があり、3代の5人家族が住んでいる。小泉さんの家もある。北風なら地上40メートルを110ホーンの轟音を直撃しながら着陸してくる(右下写真)。完全な人権侵害、生きる権利をも奪っている。
これらは、暫定滑走路が明らかに違法状態にあることを示している。にもかかわらず、国と成田市などの自治体や財界は、現在進めている北延伸工事に続いて、旧来の計画通り南にも伸ばし、3800メートルの滑走路にして、24時間運用を行おうとしている。それは、東峰部落の消滅、そのことによる東峰神社、開拓道路の撤去と、市東さんの農地の 強奪による「ヘ」の字誘導路問題の解消を前提としなければ不可能だ。そんなことが「国策」の名のもとであろうと許されるものか。しかも、43年前に考えられた「国策」、アジアのハブ空港としての成田空港という絵は、すでに韓国の仁川(インチョン)国際空港が3本の滑走路(さらに1本計画中)があり、日本の25の地方空港ともつながって、東京からさらに1時間もかかる成田空港よりも便利であり、しかも安い、この仁川空港の存在によって破産している。すでに貨物取扱量も成田空港を超え始め、「成田パッシング(素通り)」という言葉が生まれたように、成田空港を拡張しても「焼け石に水」でしかないことは誰の目にも明らか。
ではなぜ、違法状態を前提に、村を消滅させ、市東さんの農地を奪うことが行われようとするのか。それは安倍政権の「アジア・ゲートウェイ構想」、福田政権の「08骨太方針」で示されたように、航空の自由化、農業の集約化(農地強奪)を土台としたアジア諸国とのFTA/EPA締結による「東アジア共同体」を形成しようとする政治だ。これが、道行く人々にどう関わるのかということを、わかりやすく提示できなければならない。アジアの人々、農民と労働者にさらなる強搾取を強制し、安い労働力の日本への流入を促進して、日本の格差と貧困をより一層すすめる。このことによって生まれる利潤によって、日本の大資本が生き残ろうとする。こんな政治を許していいのかということだ。「FTA反対」というフィリッピンや韓国などで、農民や労働者によってすでに掲げられて久しい、米日帝国主義との闘いがあるのに比して、残念ながら、われわれの闘いの中で「FTA反対」を中身を持って掲げ切れているのか、これさえも明らかにされていない現実を絶対に越えなければならない。
今、三里塚では、市東孝雄さんが「1億8千万円の補償」を拒否して、「1本100円の大根を育てて消費者に喜んでほしい」と、農民として生きることを求めて、こうした流れに農民魂をかけて仁王立ちして阻んでおられる。反対同盟は、こうした市東さんを先頭に、「農地死守」、「軍事空港反対」、そして「FTA反対」を掲げて、流血をも辞さず、今、闘いに立ち上がっている。この反対同盟の闘いと日々の営農(それ自体が闘いとなっている)を、私たち一人一人が自らの血と肉に取り込めるような肉薄を、学ぶことを通してしか、「わかりやすく提示する」ことはできないだろう。今からでも遅くはない。現地に行き、現地を、農地を、土を、そして農民のくらしを、営農を、そして43年間つちかわれてきた農民魂を、一人ひとりが肌で感じることではないだろうか。
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